2006
ある日の昼下がり。
学校から帰ってきた真鈴ちゃんが走りよってきました。
「お父さん、お母さん!」
「見て見てー! あたしもA+とったよー!!」
ところが、お父さんとお母さんはなにやらお取り込み中。
「……ふん。いーもん……」
真鈴ちゃん、すねてしまいました。
お父さんとお母さんの仲がいいのはいいんですが、ね。
「さあ、裕也。宿題しような。終わったら、いいことがあるぞ」
「いいことって、何?」
裕也君の誕生日を祝うことができなかったので、せめて誕生日プレゼントは用意しようと思った俊介父さんです。
宿題が終わった後は、親子でダンス。
「ねーねー、宿題終わったよ。いいことってなーに?」
「今に分かるぞ。おわ!?」
お父さん転びました。
スポーツマンに見えて実は、運動神経0のようです。
さて、お父さんの言っていたいいこと。
それは、このことです。
「うわー! 子犬だ!」
裕也君のお誕生日プレゼントです。
「かわいい!」
子犬の名前はマックス。
ペット里親サービスで、引き取ったのです。
まだ小さいので、どんな犬種になるのかはわからないのですが。
「へーんだ。裕也なんかに子犬の世話ができるもんですか。お姉ちゃんに子犬を渡しなさい!」
「やだもん!」
あ、また喧嘩してる。
あーあ。泣かしちゃった。
「うわーん! お姉ちゃんのばかー!!」
はいはい。
すごい顔で泣いてますね。
さて、マックスはダイニングの隅に居場所を作ってもらって、この通り。
すぐにくつろぎ始めました。
小さい頃は家の中で飼って、大きくなったら外に犬小屋を作ってやるつもりです。
「よしよし、マックス」
マックスが来て一番喜んでいるのは、もしかしたらお父さんかもしれません。
「かわいい……」
また鼻の下を伸ばしてますよ、この人。
「ねーねー、お母さん。真鈴お姉ちゃんがいじめるよー」
裕也君、真里恵さんにちくる。
「そーお? 真鈴ちゃんはいけないわねー」
そして今晩も、ミートボールスパゲッティ。
「お母さん、またー?」
「文句言わずに食べなさい。お母さんの得意料理なんだから。おいしーでしょ」
真里恵さん、まだ他に作れる料理がないだけです。
スキルがあがるまでは、当分スパゲティが続く見込み。
「じゃあ、また明日な。マックス」
「くーん」
お父さん、お休み前にご挨拶。
「と……。その前に」
洗い物が残っていました。
お父さん、ごくろうさまです。
本当によく気のつく人だ。