2007
「弘美……。立派に成長して……。くううっ!」
「ママ、泣かないで。まるで今生の別れみたいじゃない! それじゃ、私いくね」
麻美ちゃん、わが子の成長に涙です。
あの小さかった弘美ちゃんが、今日こうしてアカデミー・ル・トゥールに通うことになったのです。
さて、寮に入った弘美ちゃん、早速食堂でイリーナちゃんと出会いました。
「私、弘美。これから四年間よろしくね!」
「私はイリーナ。こちらこそよろしく」
末っ子だった弘美ちゃんにたいして、イリーナちゃんは三人の妹を持つお姉ちゃん。
同い年でも、彼女の方がちょっと大人っぽいようです。
こちらでも、男性陣が顔を突き合せました。
「俺、修太。誰かかわいい子を見つけたら、紹介してくれな。俺、大学ではバイトと彼女探しに専念するつもりだから。リッチな人生には、金と良き妻が必要不可欠だからな」
「俺、樹。ま、適当によろしく」
「がつがつ」
圭君は食べるのに必死で、自己紹介なんか聞いちゃいません。
食事の後、弘美ちゃんは寮の談話室へとやってきました。
テレビがおいてあるのはここしかないんですが……。
ソファーはすでに、勉強中の他の寮生でふさがっていました。
「うわー。皆勉強熱心ねー!」
そりゃそうですよ。
彼らは永遠に大学生をやってるシム達ですから。
イリーナちゃんはまじめです。
すぐに学期末レポートに取り掛かりました。
まだ最初の授業にも出ていないというのに、どうやって書いてるんでしょうか。
樹君はそそくさと授業へ。
弘美ちゃん、授業が終わるなり、麻美ちゃんに電話をかけました。
「あ、ママ? 今、授業終わったとこ。大丈夫よ。寄り道しないですぐに寮に帰るから。また寝る前に電話するねー」
パパの弘君が亡くなってまだ日が浅いですから、弘美ちゃん、一人残されたママが心配なようです。
でも麻美ちゃんは弘美ちゃんの犬、ころと、弟家族と一緒に暮らしてるから、まったくの一人ではないんですけれどね。
同じく、授業から帰ってきた樹君は、食堂に直行してました。
「うめぇうめぇ」
しかしその顔は……。
「って、おばちゃん! これ腐ってるけど……」
「あら、ごめんね」
樹君、食べる前に気づいてください。
「あ、ここ座っていい? どっこいしょ」
「……」
腐ったものを食わされた次は、微妙なファッションセンスの男と相席です。
あれ?
弘美ちゃんはもうお休みですか。
まだ夕方ですよ。
と思ったら、ただの昼寝でした。
目を覚ますなり、今度は実の姉に電話です。
「あ、お姉ちゃん? 大学の寮ってなんか楽しいわー!」
それより弘美ちゃん、ちゃんとレポートは書きましたか?
お気楽なところは、パパに似たのかもしれません。
「ぐー。むにゃ……女の子……」
樹君は疲れてお休みです。
ロマンス願望なのに、今日は女の子とは縁遠い一日でしたね。
イリーナちゃんと修太君は食堂で夕食。
修太君、待望の女の子が目の前に二人もいます。
どちらも美人さんじゃありませんか。
修太、えらくうれしそうです。
しかし、そのなりで女の子を口説くのは難しそうですよ。
お昼寝していた弘美ちゃんが加わってきました。
「だから、リサイクルは地球を救うのよ」
「へー、イリーナちゃん環境問題にくわしいのねー」
「資源節約には俺も賛成だよ」
「ところで修太君って、私のいとこになるんだよねーえ」
「俺のお袋が、弘美の親父と異父兄弟だから、形式上はな。あんまり血は近くねーと思うけど」
「私と圭君はいとこだよ。私のパパと圭君のパパは同父? 兄弟だから」
弘美ちゃんのパパの家系は、複雑怪奇なようです。
食後、弘美ちゃんは談話室で樹君とばったり。
「樹君だったっけー。私弘美。よろしくねー」
「よろしく……」
「ところで樹君は環境問題とかどう?」
「新聞紙に塩を振りかけて燃やしたら、ダイオキシンが出るかもな……」
「ふわぁー。ねむ……」
(この子、一応チェックしとこうか……)
ロマンス願望にロックオンされましたよ、弘美ちゃん。
弘美ちゃん、自分の部屋にパパと一緒にとった写真を飾りました。
さあ、これからの学生生活には、どんなことが待っているのでしょうか。
あんまり、ろくな事は起こりそうにないと思いますが。