2007
「ママ、ただいま!」
「弘美!」
大学に行っていた弘美ちゃんが、卒業して帰ってきました。
麻美ちゃん、大喜びでかわいい末娘を迎えます。
「弘美……。いつの間に、こんなに立派に成長して!」
本当に、ついこの間までお下げ髪を揺らしてパパと一緒に走り回っていたのにね
時の流れをひしひしと感じます。
麻美ちゃんも年をとりました。
ねぇ、弘美ちゃん?
「えへえへ、ママ……」
ひろ……。
この顔は見なかったことにしときましょう。
さあ、感動の再会はこの辺にして。
「弘美、それにしてもすごい格好ねぇ。今すぐにでも新しい洋服を買ってこなくちゃ!」
「うん。そうするわ」
早速自家用車で買い物に出かける弘美ちゃん。
「うわー、すごい車! ぶつけたりしたら大変だわー」
なにしろ、麻美ちゃんや透君夫妻はキャリアを極めていますから、お金持ちです。
当然車もお高いものに。
一応、透君の車なんですけどね。
洋服を買ってきたので、すぐにお着替え。
タンスをあさっていると、麻美ちゃんが若いころ着ていた下着が出てきましたよ。
「うへー! ママったら、こんなの着てたのー!?」
似合ってなかったけどね。
弘美ちゃんも似合わないから、もっと可愛いのを着ときなさい。
夜が明けて、弘美ちゃんは早速家の裏手にあるパパのお墓のところまで行きました。
「パパ、私帰ってきたよ……」
しばしの間、思い出にふける弘美ちゃん。
でも、寂しくなんかないよ。
こうしてここにお墓をおいといたら、もしかして、今夜あたり出会えるかも。
感慨に浸った後は、元気に遊びましょう!
弘美ちゃん、ダイブ!
「うわー! この家、プール作ったんだー!!」
バッチョーン!
腹打ち!
「私も行くわよー!」
麻美ちゃんも華麗にジャンプ!
まだまだ若いですね!
あ……、カーラがころのえさを食べてる……。
佐田家分家の女王の所業に、ただ見ているしかない気弱なころ。
プールでひとしきり遊んだ後は。
「今日は弘美の卒業お祝いに、皆でご飯を食べに行きましょう」
「うわー! ママ、ありがとう!」
やってきたのは高級レストラン「ロンドステ」
あれ? 詩織さんも一緒に呼んだはずなのに来てないや。
しょうがない。三人だけでお祝いしましょう。
「それでは、弘美の大学卒業と成人を祝って……」
「「「かんぱーい!」」」
「おめでとう、弘美ちゃん」
「ありがとう、叔父さん!」
メニューは三人とも同じ「ライム風海老のたたき」
家族と食べる食事はおいしいですね。
話も弾みます。
大学では樹君に振り回されっぱなしだった弘美ちゃん。
それも今になってみれば、まあいい思い出かもしれません。
一方そのころのロンドステ近郊。
あっ! 吸血鬼が!
出会いサービスのおばちゃんを吸血鬼にしちゃ困るよ! ウェンディ伯爵夫人!
ああもう!
そういえば、モティマーさんも吸血鬼にされていたっけ。
これ、治すのどうするんでしょうねぇ。考えなきゃ。
話を戻して。
食事の後は、透君に行きつけのバーに連れて行ってもらいました。
弘美ちゃん、もうお酒が飲めるもんね。
「まさか、弘美と一緒にお酒が飲めるなんて、思いもしなかったわ」
「やだなぁ、ママったら。いつまでも子ども扱いなんだから」
世間ずれしてない弘美ちゃんは、まだ子供みたいなもんですよ。
まあ、親からすれば子供はいつまでも子供のままなんでしょう。
透君、なにやら向こうにかっこよくウィンク!
決まってますね!
でも、向こうに誰がいるんですか?
さらに。
麻美ちゃんが頼んだカクテルを、他のお客さんが横取り。
「あっ……」
そしてわざわざ目の前で飲む。
それは何に対する嫌がらせですか?
「私のとられちゃったから、頂戴ね」
「えっ……?」
麻美ちゃんも、透君のを取る。
最後にちょっと邪魔が入りましたが、楽しい外食でした。
「帰りは私が運転するわね」
「安全運転でお願いね」
自宅に帰ると、愛犬が鏡に向かって唸っていました。
ころ、それ自分自身の姿だよ……。