2007
朝です。
樹君の友達が訪ねてきました。
ためしに望みを聞いてみたところ、
「樹と電話で話をする」
目の前にいるんだから、直接話せよ!
こんな友人は、放っておきましょう。
自由家業キャリアって、休みの日が多いですね。
時間をもてあましてしまって、困ります。
天気のよい日に、公園のベンチに腰掛けてまったりする樹君。
女の子と一緒にいるのも楽しいけど、こうして一人でいるのも、彼には性にあっているようです。
と、季節はずれの陽気に魂まで抜けて、ぬぼーっと立ってる人が一人。
弘美ちゃんです。
「弘美じゃないか。どうしたんだこんなところで」
「お天気がよかったから、散歩してただけ」
「それより、子供が生まれたんだってな。おめでとう」
「ありがとう」
なんとなく元気のない弘美ちゃん。
まあ、出産で疲れているのかもしれません。
「あのさ、もうちょっとこっちに寄らない?」
「えっ?」
樹君、いくらなんでもそれは。
弘美ちゃん、、もう結婚して子供までいるんだし。
ええぇええーーーーーっ!!?
いいんですか! 弘美ちゃん!
弘美ちゃん、どうやら樹君が好きだったころの気持ちを思い出してしまったようです。
でも、今は前とは状況が違います。
「やっぱり……帰る」
「あ、ごめん……」
なんとなくそのまま家に帰るのも気が乗らず、またここにやってきました。
いつもの場所に座って飲み物を頼みます。
すっかり常連になってますね。
(あ~……。まずかったのかなぁ。人妻だもんなぁ)
弘美ちゃんの性格から言うと、本来なら浮気なんて絶対しないはずなんですが。
いまさらにして、弘美ちゃんがどんなに自分のことを好きでいてくれたか、思い知らされた彼です。
(もう連絡しないって手もあるしな……)
そして、できれば人妻に手を出したくないものです。
「うーん」
されど樹君とて、大学時代から抱き続けている願望「弘美を口説く」があります。
彼自身も、弘美ちゃんのことが忘れられないのです。
上の空でドリンクを飲み干して、帰ろうとお店を出ると。
「あ!」
弘美ちゃんとばったり。
そこで樹君、弘美ちゃんを忘れるために、いっそ口説いてみました。
これで拒否られれば、と思いきや……!
すんなり受け入れられたし。
しかも、弘美ちゃんもなんかの願望が叶ってるし!
どうやら本格的に、弘美ちゃんに浮気心が芽生えてしまったようです。
かえって罪なことをした樹君。
恐る恐る願望を聞いてみたところ、
「樹と遊ぶ」
遊ぶくらいならいいんですけど。
思ったより色気のある願望は出していなかった弘美ちゃん。
それでも、旦那さん以外の男性が願望に顔を出すのは、一途な家族願望にとっては明らかに浮気心ですよねぇ。