2007
朝。
私は朝食の準備。
といっても、用意するのは自分の分だけど。
彼は出勤。
裏のお仕事のはずだけど、まるでサラリーマンみたい。
彼のネクタイ、どうにかしたいなぁ。
あ、ドンだ。
私への怒りに燃えながら、また新聞泥棒。
彼の怒りがおさまるのは、いつのことだろうか。
一人で朝食。
どうも昨日から体がだるい。
朝食後、突然の猛烈な吐き気でトイレへ。
どうしたというんだろう。
もしかして、これがノロウイルスとかいうものか。
こんなときは、ぱんだと一緒に遊ぶのが一番。
でも、もしかして……?
うえー。
まただ!
トイレが詰まった……。
最悪。
彼は喜んでくれるかな。
それにしても、やたらお腹がすく。
彼が仕事から帰ってきた。
ぱんだにただいまのご挨拶。
ぱんだもいいけど、私にもかまってほしいです。
「晴美、ただいまー」
「おかえりなさい、勇樹さん」
抱き合っていたら、勇樹さんの弟さんが、勝手に家の中に入ってきた。
まだ日は高かったのだけど、体の疲れがひどいので、私はベッドへ。
弟さんの相手は勇樹さんに任せた。
勇樹さん、早速弟さんのために夕食を作る。
それにしても、突然訪ねて来たりして、どうしたんだろう。
彼も結婚していたはずだが。
その日の晩、お腹が大きくなった。
ああ、やっぱり。
勇樹さんに報告。
「うわー。ほんとにおっきいな」
たのしみ、ですね。
その後、勇樹さんはお仕事へ。
何も家からその格好で行かなくても……。
つわりもひとまず治まったので、食事をすることにする。
いくら食べても、お腹がすぐにすくのだ。
もうすぐ家族が増えるなんて、うそみたいだ。
男かな、女かな。
泥棒!
と思ったら、帰宅してきた勇樹さんだった。
彼の格好は、心臓に悪い。
2007
新聞配達の少年に挨拶。
産休で仕事が休みだと、することがなくて暇だ。
それにしても、この少年は感心。
御礼の気持ちにチップをあげた。
毎朝ありがとうね。
ポストを覗くと、またお食事クーポン券と、誰かからのラブレターが入っていた。
いまさらそんなものをくれるなんて、一体誰からだろう。
まったく心当たりがない。
新しい車を買った。
これからもちょくちょくダウンタウンに出るだろうから。
これでもう、車の扉が閉まらないなんてことはない。
前の車は、一回閉めただけではちゃんと閉まらなかった。
野良犬が通りかかった。
この犬、この間ダウンタウンで見た気がする。
棒投げをして遊んでやった。
なかなか人懐っこい。
あ!
犬が、ぱんだに吼えてる!
怯えるぱんだ。
ぱんだ、大きな目をして震えている。
ぱんだは起きてきた勇樹さんに救出された。
よかったね。
勇樹さん、野良犬に教育的指導。
「こら。弱いものいじめしちゃだめだろ」
「くーん」
私はお腹がすいていて、ひたすらファラフェルをぱくぱく。
食い意地張っててすみません。
「赤ちゃん楽しみだね」
本当に。
勇樹さん似だといいのだけれど。
勇樹さんの出勤を見送ってたら、ゴミ箱が倒されていることに気がつく。
誰だろう、こんなことをしたのは。
やっぱりドンだろうか。
仕事に行ったと思った勇樹さんが、すぐに帰ってきた。
どうやら仕事をクビになったらしい。
ひどい落ち込みようだ。
慰めてあげたかったが、私の体力はつきかけていた。
心配だけど、少し昼寝することにする。
今日の夕ご飯は私が作ってあげよう。
2007
晩に、また一回りお腹が大きくなった。
出産の日も近い。
勇樹さんは友達に電話をかけて、仕事でクビになった憂さを晴らしている様子。
私は腕によりをかけて、彼に夕ご飯を作る。
仕事はまた探せばいいじゃない。
あなたは実力があるのだから、またすぐに昇進できますよ。
それより、家に帰ったら、その仕事着は着替えてくださいな。
夕ご飯の後、彼は早速トレーニングを開始した。
どうやら、少しは元気を取り戻したよう。
よかったな。
おやすみなさい。
明日の晩には赤ちゃんが生まれるよ。
翌朝。
遅くに起きて、私はお風呂。
今日は勇樹さんがご飯を作ってくれてる。
彼はなかなか料理上手。
一人暮らしが長かったものね。
「俺、子供が生まれるまでは家にいるよ。仕事はその後で探せばいいし」
「そうね。それだと私も安心できるわ」
ありがとう、勇樹さん。
そして、晩。
テレビを見ていたら、陣痛が来ました!
勇樹さんは階下で筋トレ中。
勇樹さん、痛い!
早く来てー!
もうだめ。
私死ぬかも。
鼻からスイカを出すって、こういうことだったの?
私の悲鳴を聞いて、勇樹さんが走ってきた。
「晴美ー!?」
勇樹さんが駆けつけると同時に、生まれました。
私と同じ瞳の色をした、女の子。
春日(はるひ)と命名。
「春日ー! パパだぞー!」
男の人って、気楽でいいですね。
でも、春日がパパに似てくれるとうれしい。
きっと美人になるだろうから。
初めて腕に抱く我が子。
きっと、天国にいる私の両親のところから来たんだね。
私もとうとう、人の親になりました。
2007
春日ちゃん、朝ですよ。
たくさん飲んで、丈夫な子に育ってね。
パパにも抱っこ。
勇樹さんも、積極的に子育てを手伝ってくれる。
オムツ替えもこのとおり。
ぱんだ、おまえに妹ができたよ。
もう少し大きくなったら、一緒に遊んであげようね。
子供の成長は早いもの。
今日は春日の誕生日。
身内を呼んでパーティーをした。
勇樹さんの弟さんが、春日にミルクを飲ませてくれた。
小さな我が家が、こんなにおお賑わい。
春日、成長。
この髪型は……。
どうやら、勇樹さんのお母さんの髪型らしい。
そして、残念ながら、春日は私そっくりの目元だった。
春日はさっそくおまるの練習。
これからが、手のかかる時期ですね。
顔は私に似たけれど、春日は私と違ってとっても社交的。
お客さんにおねだりして、抱っこしてもらったり、
叔父さんと一緒におもちゃで遊んだりしてた。
この辺はパパ似。
でも、快活は1。
これもパパ似。
どうも両親の似なくていい部分が似た感じ。
「そうかー。おまえの子も、もうこんなに大きくなったのかー。月日のたつのはあっという間だな」
パーティーが終わって、お客が帰ってしまった後。
最後まで残っていた、一番上の兄がしみじみとそう言った。
2007
子育ては大変。
おまるの練習。
待っているのは結構退屈。
さあ、夕ご飯ですよ。
あらら。
手で食べるんだね。
後始末が大変そう。
パパはお疲れ。
ポストの前で立ったまま寝てしまってた。
器用な人だ。
そっくり親子。
この子が大きくなったら、私と同じ髪型にさせてみようか。
この感じは……。
やっぱりだ。
二人目懐妊です。
ちゃんと面倒見てたつもりなのに、お漏らしをさせてしまった。
おまる、せっかく覚えたのにね。
ベビーサークルからなかなか出してあげなかった、私が悪い。
甥が訪ねてくる。
お互いの近状報告。
皆元気そうで何よりだ。
姉さんも相変わらずみたいだね。
おや、新手の新聞泥棒。
とかいいながら、よく見てみれば。
姪の息子だった……。
ショック。
こら! お母さんにいいつけるぞ!!
二人で怒鳴ってみる。
私は身重。自分の面倒を見るので精一杯。
甥には、一人で適当にくつろいでってもらおう。
「おばさんも大変だね。その体で子供の世話と家事でさ」
そう思うなら、何か手伝っていってよ。
「翠たん! こばんわ!」
「お、えらいなー。ちゃんとご挨拶できるんだ」
春日が甥のおもてなしをしてくれた。
「ろけとー」
「僕は宇宙飛行士になるのが夢だったんだよー」
「そーら、高い高ーい!」
「きゃー!!」
この二人、いとこ同士になるんだっけ。
ずいぶんな年の差だ。
そうしていると、親子みたいだよ。