2007
さあ、春日の成長の日。
今日も親族を集めた。
こういう機会がないと、なかなか集まれないものね。
春日、成長。
うわあ、私の若い頃とそっくり!
「春日、綺麗になったなあ。パパは心配だぞ」
そんなにほめられると照れるなあ。
って、何で私が恥ずかしがらなくちゃいけないんだろう。
亡くなった一番上の姉の娘、弘美ちゃん。
大学を卒業したはずだけど、ケーキをほおばる姿は、なんだかまだまだ子供みたい。
ほとんど春日と同年代に見える。
「ねえねえ、叔母さん聞いて! 私この間、近くの公園でとっても素敵な人に出会えたの!」
「まあ、よかったわねぇ」
姉が亡くなって落ち込んでいるんじゃないかと心配してたけれど、どうやら大丈夫そう。
春日の成長を見届けたら、今度は私達の番。
それまでせめて、若い姿を満喫していよう。
娘達は大学入学へ向けて、必死に勉強。
春日は……、これ、何の道具?
どうやら、うそをつく訓練をして、創作力を高めているらしい。
勇樹さんが仕事の報酬としてもらってきたものだ。
私も自分の仕事の報酬で、さつきに料理を教えることにした。
「さつき、これはチョコレート製造機よ」
「チョコレート?」
タンクにチョコを入れたら、後はひとりでに完成品が出てくる優れものだ。
「こうして出てきたチョコレートをすばやく選別して、箱につめるのよ」
「へー。おもしろそう!」
「商品にならないチョコは、こうしてお口の中に。もぐもぐ」
「私も食べるぅ!」
ぱんだー。
私もとうとうおばあちゃんになるんだよー
ステレオをつけっぱなしにしていたら、勇樹さんがダンスに誘ってきた。
「俺達の誕生日は、家族だけでやらないか?」
「そうね。それもいいかもね」
ぱんだ。
そういえば、ずいぶん長生きだ。
私達より長生きかも?
ぱんだはこの先もずっと、私達家族を見守り続けていてほしい。
勇樹さん、ついに成長。
彼のこの姿も、見納めかぁ。
私も、さつきの宿題をみてやった後……、
ついに変身。
さようなら、私の青年時代。
晴美おばあちゃんの出来上がり。
「ぱんだー。ママとパパがお誕生日を迎えたよ! おまえもうれしい?」
老年期、思っていたより悪くないかもしれないな。
結婚してからは子育てにおわれる日々だったが、子供達ももう一番手のかかる時期は過ぎた。
私達もこれからは、ゆっくり出来る時間が多くなるだろう。
ギターを弾く勇樹さん。
彼は今度は、娘の肖像画に着手したみたい。
私も誕生日祝いに、彼の肖像画を描いてあげようかな。