2007
朝。
昨日はあんなことがあったから、気が動転して、うっかり下着のまま寝てしまった。
……もう少しかわいい下着を買ったほうがよかったりするんだろうか。
朝から、河内さんちの旦那さんが、また電話をかけてきた。
本当にまめな人だ。
ぱんだ、私、婚約したよ……!
今日は買い物に出かける。
せっかくなので、堀川さんに選んでもらった服を着てみた。
似合ってるかな。
そうだ。
髪形も変えた方がいいかもしれない。
誰ですか? これ。
ちょっと微妙な感じもするが、今日一日だけのお遊びだ。
まあいいだろう。
ブティックに行って、結婚式の衣装を買う。
あれ、透兄さんだ。
「んん? おお!?」
……。
「なんだー! 晴美じゃないかー。誰かと思ったよ」
「透兄さん、こんにちは。どう? この服、似合ってる?」
「服はとってもよく似合ってるよー」
服は、ですか。
「でもその髪型は、晴美にはちょっと似合ってないかなぁ」
「私もちょっとそう思ったんですけど」
「でもかわいいよー」
そう言われると、嬉しいです。
堀川さんの仕事が終わる時間になったので、電話で呼び出しました。
堀川さんが来るまで、野良猫と遊んでる。
そして。
「堀川さん!」
「どちらさまです?」
飛びついたら、ちゃんと受け止めてくれました。
「重い……」
私、筋肉つけてますからね。
レストランで食事。
なぜか、前の客が食べ残した皿がそのままになっている席に案内された。
いやがらせですか?
「それにしても、晴美さん、見違えたな」
「似合ってますかー?」
「似合ってるよ」
あなたがそういってくれれば、すべてOKなんです。
ウエイターが注文をとりに来た。
なんて鉛筆の持ち方をしているんだろう。
今度は、私が彼に一口食べさせてあげた。
ライムが、すっぱかったですか?
2007
またこの場所に来た。
私と堀川さんがはじめて会った場所でもある。
「ラッキーシャック カード&ドリンク」
堀川さんがカラオケで歌ってくれた。
なかなかだ。
客観的に言えば、そこそこ、だ。
そしてやっぱり、カード台へ。
今日は私も乗り気だ。
さりげなくお互い、婚約指輪のはまった手を見せ付けあう。
しかし堀川さん、指輪がぶかぶかでは。
すごいメイクの人が、ゲームに参加してくる。
一回目は私の勝ち。
あ、いつかのおばあさんが来ている……。
お、二回目も私が勝ちました。
今日は大もうけです。
それにしても。
すごいメイクですね。
もしかして、姪のやっているサロンの犠牲者だったりするんだろうか。
三回目は堀川さんが勝ちました。
そろそろ、帰るとしましょうか。
翌日、思いもかけず、いっこ上の兄が訪ねてきました。
「やあ、一人暮らししてるっていうから、心配で来ちゃったよ」
「ありがとう、翔兄さん」
と、兄と談笑していたら……。
ドンだ。
私への怒りにまだ燃えている。
新聞を盗って逃げました。
敢えて追わないことにします。
結婚式に備えて、堀川さんには私の家に引っ越してきてもらった。
「堀川さん、翔兄さんにも会ってあげてね」
兄に堀川さんを紹介。
兄も、私を心配して訪ねて来た矢先のこと。結婚を喜んでくれた。
「そうかー。お前もいよいよ人妻かー。月日のたつのは早いもんだな」
本当にそうだ。
両親がなくなってから、どれほど経つのだろう。
振り返れば、その間に色々あった。
ぱんだ、かっこいいパパができてよかったね。
結婚式に備えて、その日は早めに就寝です。
2007
結婚式当日。
大事な日なので、堀川さんには仮病を使って仕事を休んでもらう。
この日の朝も、ドンは新聞泥棒。
彼は結婚式には呼ぶまい。
彼が親族に電話をかけて、いよいよ、結婚パーティの始まりだ。
私も、呼べるだけの身内や友人を呼んだ。
あ、喧嘩……。
どうやら堀川さんの弟と、牛の中の人らしい。
なんとなく仲が悪いそうだ。
シドも呼んだ。
来てくれたところを見ると、私と堀川さんとの関係を、許してくれたのだろうか。
そして式が始まる。
こんな幸せな気持ちになったのは、生まれて初めてだ。
両親がいないのは残念だが、こうして兄や姉達に見守られて、式を挙げられるなんて。
二人で永遠の愛を誓い合う。
しかし、私のなかではまだ、シドやドンへの気持ちもあったりする。
でも、今は秘密。
時間が経てば、彼らへの恋も冷めるだろう。
それまでは、絶対秘密。
ところでシドは、式には参加せず、家の中でポテトチップスを食べていた。
やっぱり、怒ってるのか。
それとも、何か食べるものを用意しなかった私が悪いのか。
みんなの拍手で、結婚式は終わり。
翔兄さん、椅子がないと叫んでる……。
総勢二十人くらい呼びましたからね。
お次はケーキカット。
中には手づかみで食べさせる人もいるけど、私はちゃんとフォークで。
はい、あーん。
おいしかった?
参列者の皆にも、ケーキを配りました。
私達も、甥と一緒にケーキを食べる。
あ、ドンが勝手に入ってきて、冷蔵庫を物色してます。
まあ、今日は許してあげることにしましょう。
することがなくなって、テレビの前に集うそれぞれの親族。
私もすることがなくなって、甥と枕たたき。
外では、透兄さんと美香姉さんがキックバックを始めました。
こんな調子で、身内が入り乱れての騒乱の中、結婚パーティーは無事終了。
祭りの後を片付けるのが、二人の共同作業初仕事。
思ったより散らかってなくて、よかった。
勇樹さんには、パンダのえさをあげてもらいました。
猫か犬を飼いたいけど、ぱんだがいると、やっぱり無理ですね。
2007
結婚後、夫婦そろって初めてのデート。
勇樹さんの買い物に付き合う。
彼はおしゃれだ。
私より服を持っている。
私も、もう少しおしゃれに気を使った方がいいのかな。
勇樹さんに選んでもらった服も、特別なときにしか着ないし。
あ、野良犬がベンチを破壊中。
すかさず、教育的指導。
誰かが教えてやらなくてはね。
私は写真が苦手だ。
だから、今まで写真を撮ったことはない。
それでも、勇樹さんのたっての希望なら、私も断れない。
彼のうれしそうな顔!
写真の後は、二人でレストラン。
こうして二人で並んで座っていると、本当に私はすぎたお婿さんをもらったものだと思う。
夫婦の初デート。
お祝いに、二人そろってヒレステーキ。
おや、彼が私のサヤエンドウをつまみ食い!
私もすかさず、つまみ食い。
二人でお食事って、本当に楽しい。
レストランを出ると、シドの後姿が……。
私が勇樹さんと結婚してしまったから、彼は今一人らしい。
彼は、大丈夫だろうか。
食事をしたあとは、お決まりの場所へ。
「ラッキーシャック カード&ドリンク」
お酒を飲んでいたら、知り合いにばったり。
姉の恋人だった須々木素也さんだ。
子供もティーンに成長して、義理の娘が「パブねもす」を再復活させて、色々と充実した日々をすごしているようだ。
話し込んでいたら、少し疲れたようだ。
帰りは、勇樹さんに運転してもらおう。
今日は楽しかった。
またちょくちょく二人で出かけたい。
勇樹さんはお風呂。
彼の鼻歌が聞こえる。
おやすみなさい。
2007
朝。
私は朝食の準備。
といっても、用意するのは自分の分だけど。
彼は出勤。
裏のお仕事のはずだけど、まるでサラリーマンみたい。
彼のネクタイ、どうにかしたいなぁ。
あ、ドンだ。
私への怒りに燃えながら、また新聞泥棒。
彼の怒りがおさまるのは、いつのことだろうか。
一人で朝食。
どうも昨日から体がだるい。
朝食後、突然の猛烈な吐き気でトイレへ。
どうしたというんだろう。
もしかして、これがノロウイルスとかいうものか。
こんなときは、ぱんだと一緒に遊ぶのが一番。
でも、もしかして……?
うえー。
まただ!
トイレが詰まった……。
最悪。
彼は喜んでくれるかな。
それにしても、やたらお腹がすく。
彼が仕事から帰ってきた。
ぱんだにただいまのご挨拶。
ぱんだもいいけど、私にもかまってほしいです。
「晴美、ただいまー」
「おかえりなさい、勇樹さん」
抱き合っていたら、勇樹さんの弟さんが、勝手に家の中に入ってきた。
まだ日は高かったのだけど、体の疲れがひどいので、私はベッドへ。
弟さんの相手は勇樹さんに任せた。
勇樹さん、早速弟さんのために夕食を作る。
それにしても、突然訪ねて来たりして、どうしたんだろう。
彼も結婚していたはずだが。
その日の晩、お腹が大きくなった。
ああ、やっぱり。
勇樹さんに報告。
「うわー。ほんとにおっきいな」
たのしみ、ですね。
その後、勇樹さんはお仕事へ。
何も家からその格好で行かなくても……。
つわりもひとまず治まったので、食事をすることにする。
いくら食べても、お腹がすぐにすくのだ。
もうすぐ家族が増えるなんて、うそみたいだ。
男かな、女かな。
泥棒!
と思ったら、帰宅してきた勇樹さんだった。
彼の格好は、心臓に悪い。