2007
弘美ちゃんとデートをしたその晩のかなた君。
ビジネスキャリアで働く彼が、レントゲンについて熱く語る練習をしていたら……。
いつのまにやら、弘美ちゃんが家の中に来ていました。
おかしいな。普通、挨拶しないと勝手に家の中に入ってこれないはずなのに。
弘美ちゃん、何か言い忘れたことでもあるんでしょうか。
とりあえず、あわてて汚れていたテーブルを片付けるかなた君。
「来るなら来るって、あらかじめ言っといてもらわないと……」
でも、男の一人暮らしにしては、家の中は綺麗に整っている方ですよ。
夜も遅いですし、弘美ちゃんがおなかをすかせているといけないので、ご飯を作りました。
ついでにかなた君もお夜食にします。
「どうしたの? 突然訪ねて来たりして」
「うーんと。なんていうか、その」
どうもはっきりしない返事の弘美ちゃん。
テーブルの下では。
弘美ちゃん! かなた君の足踏んでる! っていうかヒールの間に挟んでるし!
かなた君、わけもわからず足の痛みを我慢します。
やがて食事を終えた弘美ちゃんは。
「もう夜も遅いから、帰るね」
と言って、本当に帰ってしまいました。
一体何しに来たんでしょう。
翌日の晩。
また、弘美ちゃんがやってきました。
フキダシの中にあるのは……、婚約指輪ですか?
まだちょっと気が早いんじゃない?
「あれ? また来たの?」
弘美ちゃん……。
それも気が早すぎるって。
とりあえずかなた君、今日も弘美ちゃんのためにスパゲティーを作ることにしました。
ところが。
かなた君が料理を作った後、仕事の疲れもあってソファーで仮眠を取っている間に、弘美ちゃんは帰ってしまったようです。
作った料理も、手をつけていないようでした。
「なんだったんだろう……」
めずらしいですよね。
こんなに何回も同じ人が突然訪ねて来るって。
かなた君が、もう少し気が利いていたらよかったのですが。
その日の深夜、黒い袋を持って弘美ちゃんがこっそりとまたやって来ました。
今度は家の中に入らずに、黒い袋から……、
ホットタブが出ました!
こんなでかいものが、そこに入っていたんですか!?
「やっぱり、恥ずかしくってこんなの正面きって渡せないよ……」
ど、どうやら、この間のデートのお礼として、このホットタブをプレゼントしたかったらしいです。
何回もかなた君の家に押しかけてきたのは、どうやらこのためだったようで……。
そうか……。
再び忍び足で夜の闇に消えていく弘美ちゃん。
こんな大きなものを……。
ご苦労様です。