2007
結婚式から程なくして、弘美ちゃんのおなかが大きくなりました。
おめでたです。
そして、その晩のこと。
出ました。
麻美ちゃん、天国からお祝いするだけでは飽き足らず、化けて出たようです。
自分が死んだ場所でひとしきり涙に暮れた後……。
自分の寝室だった場所へ。
(まあ、この部屋は今じゃ弘美たちが使ってるのね)
(弘美ー! 結婚おめでとうー!)
声なき声で祝福する麻美ちゃん。
ほら、弘美ちゃん、後ろ後ろ!
ママがいるよ!
しかし、残念ながら弘美ちゃんは麻美ちゃんに気がつきませんでした。
まあ、幽霊なんてこんなもの。
翌日の朝、麻緒ちゃんが訪ねてきました。
「気のせいかなぁ。昨日の夜はずっと、誰かに見られてる気がしたの」
「妊娠して、体調が変わったせいじゃない?」
「私も、双子を生むまでは、気分がすぐれなかったものよ」
「そういうものかなぁ」
「僕に出来ることがあったらいってよ。なんでもするから」
「ありがとう、かなたさん」
ところがその日の晩も……。
今度は弘君の幽霊です。
しかも、弘君は麻美ちゃんほどおとなしくはありませんでした。
(お化けだぞ~!!)
「きゃああああああああああ!!!!」
「あああああ……」
弘美ちゃん、驚きのあまり漏らしちゃいました……。
「あ、お姉ちゃん……」
ころと遊びに外へ出てきた麻緒ちゃんに、見られてしまいました。
パパと再会できたのはいいものの、余計なサプライズはいただけませんね。
翌日は、かなた君が仕事に出る前に、弘美ちゃんに朝ごはんを作ってくれました。
感謝。
さて、突然ですが。
校長先生を呼びました。
弥生ちゃんを私立高校へ入学させるためです。
やってきた校長、なぜか鏡に映る自分の姿を指差して、含み笑い。
「ぷぷぷ。私がうつっとる」
そりゃ、鏡ですから。
そしてこんな日に限って、火事が起こるマーフィーの法則。
「きゃあああ! 誰かーっ!」
聖司君、火事のことを気づかれないよう、必死にトークで校長を引き止めます。
「弥生はとてもおとなしい子で、家に帰ったらまず宿題をする子でして」
「いやぁ、感心感心」
必死の消火活動。
早く消して、消して!
そしてこんな日に限って……。
「あ、出ちゃう……。出ちゃうよ!?」
ええー!!?
出産ですか!!
「いたたたた!」
陣痛ですか!?
ああもう。校長が来る日は必ず何かが起きるな!
仕事から帰ったかなた君が駆けつけてくれましたが、何もすることがありません。
とりあえず、弘美ちゃんを応援。
「ああー! 神よ、弘美を助けてください」
そして生まれました。
元気な男の子です。
名前は遥(はるか)
恐らく、お父さん似だと思われます。
校長も赤ちゃんを見に来た。
今日は火が出たり赤ん坊が生まれたりしたけれど、何とか無事に校長を接待できて、私立校入学が出来ました。
出したディナーは、黒こげ七面鳥でしたが。
まあ、よかったよかった。
そして今晩も弘君が出る。
今度は弘美ちゃんを脅かしたりしたらだめですよ。