マンドリル

「六時になったから、家に帰る」
結婚式の始まる直前。
門限で、礼司君が帰宅……。
冷たい……。



ほら！
ちょっとそこの人たち！
結婚式が始まるってば！！



参列者が、ばらばらのまま、式は始まりました。
「幸せな家庭を作っていこうね、結衣ちゃん」
「いつか、お腹いっぱいターキーやミルフィーユを食べられるような家庭にしていこうね！」
結衣ちゃん、家庭より食料問題のほうが先みたいです。



「大丈夫だよ。春になったら作物を植えて、今年の夏はきっと豪華な食事が楽しめるよ！」
「だといいな♪」



「あー……。結婚式呼んでもらえて、よかったー」
うれしそうな樹君。
しかし、かなた君と隣同士に座るのか。
すごく微妙なツーショット。



後ろのほうでマンドリルみたいなメイクの通行人に見守られながら、式は進みます。
「じゃあ、指輪交換ね」



なにはともあれ、おめでたい。



参列者の皆さんも、拍手拍手！
「おめでとう、結衣ちゃん！　健史君！」



「あら、もう式が始まっちゃってるの？」
枕たたきをしていた弘美ちゃん。
ようやく娘の結婚式を、思い出した様子。
でももう、式は終わっちゃってるよ！



それでもどうにか、最後の拍手だけには間に合ったようです。
マンドリルみたいな通行人、まだ見ています。
よほどみすぼらしい結婚式に、同情してくれてるのでしょうか。



さて、結婚式の次は、ケーキカットです。
なけなしのお金で、ウエディングケーキも買ったんです！



「うわー！　おいしそうなケーキ！」
魚が主食かつ唯一の食料である最初の冬には、本当にご馳走に見えます。



「はい、あーん」
「あーん……」
結衣ちゃん、豪快にケーキを手づかみです。



「もがが……」
無茶するなと。



「結婚おめでとーう！」
弘美ちゃん、見ず知らずのはずの畑山翠さんと、またもや枕たたき。
本当に枕たたきが好きですねー。