2007
ある朝のこと。
「ねえ叔父さん。私、仕事探そうと思うんだけど」
「あせらなくてもいいよ。家はだいぶ蓄えがあるから、好きな仕事が見つかるまでがんばりなさい」
「でも、働かなくてもいいけどなぁ。家は聖司がしっかり稼いでるから」
「うーん。さすがにそういうわけにも」
さて弘美ちゃん、今日はある人物に電話をかけました。
相手は……。
「あ、樹君? 最近どう、元気してる?」
樹君は友達でもあるし、そういつまでも怒っていられない彼女です。
「よかったら、うちに夕ご飯食べに来ない?」
招待されてやってきた樹君。
挨拶のハグですが、だいぶうれしそうな彼です。
「この間は悪かったな……。俺、なんかカーッとして」
「いいわよ。もう気にしてないから。私達、友達だもんね」
「友達……」
皆で夕食。
一人暮らしの樹君には、久しぶりに賑やかな食卓なのかもしれません。
樹君と遊びたい願望があった弘美ちゃん。
くすぐりあって、この通り。
「こちょこちょこちょ」
「わき腹はやめろって!」
それにしても、何で突然弘美ちゃんに家に招待されたのか。
その真意がいまひとつ分からない樹君です。
「完全に嫌われたと思ったんだけどなぁ。あ、ぴっけ……」
考え込んでいるさなかに突然ぴっけが飛来。
かごの扉が開いていたんですね。
夜も遅くなって、首をかしげながら樹君は帰途につきました。
弘美ちゃん、ある決心を前にして、樹君との関係をはっきりとさせたかったみたいです。
「樹君はやっぱり友達だもん。……友達だもん。恋人はかなた君」
しかし一度は恋仲にあった樹君です。
家族願望の弘美ちゃんには、まだ樹君を忘れたくない願望があったのです。
さて、翌日。
弘美ちゃんは聖司君に頼んで、論理スキルの強化です。
「これでこうやって、薬を作るのねー」
「気をつけてよ。失敗してウイルスなんて出来たら大変だからね」
夜まで特訓。
仕事を始めたらなかなかスキルをあげる暇がありませんから、今のうちにしっかりとレベルあげにいそしみます。
「今日もよく勉強したな。お仕事始めたら、バリバリがんばるぞ」
「弥生も、弘美ちゃんを見習ってたくさん勉強しなきゃね」
「えーっ?」
今夜も賑やかな佐田家家の食卓。
食後、透君はカーラと二人で、ベンチに座ってくつろぎます。
「これで弘美ちゃんが結婚したら、家ももっと賑やかになるだろうなぁ。ねぇ、カーラ」
「にゃん」
「でも僕は、弘美ちゃんの結婚式は、見れないかもしれないな。それがちょっと残念かな」
風がちょっと冷たい、静かな夕べです。