2007
三年生前期が始まりました。
この時点で、財産願望だった隆志君は知識願望に変更。
でも、この家に越してから、まだ一度も天体望遠鏡を覗く機会がありません。
レポートや課題や家事なんかで結構忙しいからな。
一番にレポートを仕上げたエルちゃん。
活発な彼女はプールに一直線です。
「やっと遊べる――」
「わーーーーっ!!」
大ジャンプ。
運動神経いいね。
ざんぶ
プールが深すぎて、エルちゃんの姿が見えなくなりました。
足吊らんように気をつけてね。
さて花梨ちゃん。
かねてより電話で親しくなっていた、この学生を呼びました。
この濃いキャラを見て分かるとおり、彼はNPCではありません。
ラ・フィエスタ工科大のデフォルト家族の一人、なんとか三世・フランシス・Jとかいう、お金持ちのお坊ちゃんです。
「花梨ちゃん、急に僕を呼び出したりして、どうしたんだい?」
「実は、私のレポートをやってほしいんですのー。私バカだから、頭のいいフランシス君がうらやましいですの」
そうです。今日は彼を口説くのではなく、いいように使うために呼んだのです。
真治君の目のあるところで浮気なんて、さすがに出来ませんからね。
さあ、たまには庶民の労働を味わって見なさい、お坊ちゃん。
「あそこまで頼まれると、さすがの僕も断れないよなぁ」
すぐさまレポートに取り掛かってくれた坊ちゃん。
それにしても、見れば見るほど気になるモミアゲ。
「ふうー。終わったー」
実はレポート、半分までは花梨ちゃんが自力でやっていたので、そんなに大変ではなかったろうと思います。
「花梨ちゃんに報告しとかなきゃ。ふふ」
「レポート終わったの? それじゃあ、俺のも頼んでいい?」
「へ?」
サトル君、花梨ちゃんに便乗。
うまく言いくるめてみせました。
「……」
ご苦労様です。
サトル君のレポートは丸々一個やらなければいけませんでした。
疲れたフランシスの耳に、突如ピアノの音色が。
「うわ! なんだ、この不協和音」
エルちゃんがピアノの練習をしていました。
育ちのいい坊ちゃんには、我慢できなかったのでしょう。
逃げるように帰っていきました。
ちっ、掃除も頼もうと思っていたのに。
「どおどお? だいぶうまくなったっしょ!」
サトル君、坊ちゃんにレポートをやってもらっている間、せっせと楽器の練習をしていました。
でも、まだまだ特訓が必要そうだね。
その日の夜。
またいつの間にか、知らない人が入ってきてました。
この間のおじいさんですね。
どうやら、キャンパスのOB達は勝手に訪ねて来るみたいです。
参考までに言っとくと、このおじいさんはキャンパスライフ二期生のルカ君です。
せっかく卒業生が来てくれたので、夕飯でも一緒にいかが?
今日のメニューはサトル君の照り焼きチキン&ライスです。
「わしの若い頃は、音楽ばかりで、勉強なんぞほとんどしとらんかったの」
「へー。そうなんすか」
卒業生の思い出話ひとしきり。
夜は静かにふけていきます。