2007
「結衣ちゃんも、とうとう結婚したんだねー」
「真美ちゃんはしないの?」
「私はするつもりなーい」
みんなでウェディングケーキを食べます。
「よかったなぁ……」
樹君も、今回の結婚式はうれしかったようです。
結衣ちゃんとはあまり会ってなかったけど、実の娘であることには変わりありません。
弘美ちゃん、式にはほとんど出なかったけど、ケーキだけは食べる。
「これ、結構おいしいのよね」
畑山夫妻も、息子の結婚式が、うれしかったようです。
「あの健史が、お嫁さんをもらうなんてねー」
「ハニーそれより、ケーキをもう一皿どうだい?」
「健史君、家の結衣を、よろしく頼むよ。あんまり愛想はないけど、いい子だから」
「任せてください、お義父さん」
任せるのはいいですけど、健史君、その口は何ですか。
「結衣も君と結婚できて、よかったと思うよ」
かなた君、優しい笑顔です。
「ママ!」
「結衣ちゃん、おめでとう!」
弘美ちゃんにとっても、結衣ちゃんは一番心配な娘だったはず。
結衣ちゃん、樹君にも大サービス。
「おじさん、結婚式に来てくれてありがとう!」
「あ……、おじさんなのね。別にいいけど……」
結衣ちゃんにとって、やっぱりお父さんはかなた君なんですね。
さて、結婚式も無事に終わり、疲れ果ては新婚さんは、お休みの時間。
「あー、疲れた。あれ、結衣ちゃんもう寝てるんだ。僕も休もうかな」
が。
結衣ちゃんのお隣では、もうすでにリリがお休み中でした。
リリ(やっぱり、ここが一番寝心地がいいですわ)
「リリ、シッシ!」
リリ(なんですのよもう……)
あえなく追い払われるリリ。
「結衣ちゃんの結婚式に呼んでもらえて、よかったね、おじさん」
「うん。まあな」
真美ちゃんが樹君と同居しているなんて知ったら、かなた君失神しそうですね。
直樹君、ケーキ二皿目。
ほかにご馳走を用意してなかったので、お腹の減った招待客はケーキを食べて飢えをしのぐしかないので……。
「君は、確か大学時代、うちの真美と付き合ってた、尚人君?」
「はい。でも、真美さん、結婚してくれないそうです」
「そうでしたか……」
さて、結婚式も終わり、招待客も帰ってしまいました。
あとに残ったのは、かなた君一人。
そして、猫二匹。
「やあ、猫ちゃん。こんばんわ」
ジジ「にゃーん(おじいさん、まだ帰らないの?)」
「結衣が幸せになってくれて、本当によかったよ」
猫たちと、静かに感慨に浸るかなた君。
彼にとって結衣ちゃんは、言ってしまえば他人です。
でも、弘美ちゃんが結衣ちゃんを気にしていた以上に、彼もまた、気にかけていたのかもしれません。
「孫はいつ頃かな。楽しみだなぁ……」
孫は、冬の間に作ってもらうつもりですよ。
「それじゃあね。猫ちゃん」
リリ「みゃーん! (夜道には、気をつけてくださいませね!)」
かなた君も、こうして帰途につきました。
あとに残ったウェディングケーキ。
ええ、もちろん捨てませんとも!
だって、大事な大事な、『食料』ですから!!!
どんだけ貧しいんだ。
結衣ちゃんの新家庭は。