2007
子供達を勇樹さんに任せて、久しぶりにダウンタウンへ向かうことにした。
ダウンタウンの野良猫にご挨拶。
久しぶりのボーリング。
大学卒業以来だっけ。
腕は衰えていなかった。
あ……。
シドだ。
シドに声をかけようとしたら、ミセス・クランプルボトムに説教をされた。
「なんだいあんた! 所帯持ちの癖に、他の男に声をかけたり何ぞして!」
いえ、まだ声はかけてませんが……。
「他の男に声をかけるなんぞ、堕落の第一歩だよ!」
そんな……。
頭、おかしいんじゃない? とかやってみた。
むしゃくしゃしたときは、お掃除をするのが一番だ。
シドが食堂で食事をしている間、私はボーリング場の厨房でひたすら皿洗い。
ウエイターが、食べ終わった後の皿を下げに来ないのだ。
私がやらねば、誰がやる。
シド……。
またベークドアラスカを頼んでる……。
先ほどのミセスは……。
あ、ボーリングやるんだ……。
すごい格好です。
ミセスを見ていたら、シドがさっさと食事を終えて、出て行ってしまった。
残念。声がかけられなかった。
でも、その方がよかったのかもしれない。
久しぶりに一人でレストラン。
本当に久しぶりだ。
たまには一人になるのも、悪くない。
そっか。
学生時代の私は、ずっと一人だったんだ。
そういえば、今日はさつきの誕生日だ。
このおもちゃ屋で、おもちゃを買って行くことにする。
どれにしようかなー。
ええい。
全部買っちゃえ!
レジに誰もいない……。
辛抱強く待っていたら、ようやくおじいさんが現れた。
でも、レジ打ちはもっと遅かった。
レジで腹打ち。
そういえば、私は学生時代、この人の夢をよく見ていたような気がする。
なぜだろう。
帰りがけに、この店に寄ってみた。
「パブねもす」
須々木さんちの義理の娘さんが経営してると聞いた。
こじんまりとしてなかなか良い雰囲気。
カードテーブルもあるし、今度勇樹さんも一緒に来てみるといいかも。
でも、子供が小さいうちは、二人そろって外出は無理かな。
ちょっとだけ。
ゲームでもうけたら、勇樹さんにも何かお土産を買って帰ろう。
2007
春日ちゃん、成績はどうでしたか?
「パパ! A+とったよA+!!」
残念。
パパは電話中。
なかなか構ってあげられなくてごめんね、春日。
子供が二人いると、本当に大変。
さつきの誕生日。
恒例の、一族集合。
さつき、成長。
……こ、これは……!
慌てて修正。
うん。
こっちの方がかわいいね。
それにしても、君はパパそっくりね。
さっそく、お誕生日プレゼントのミスターレンガで遊ぶさつき。
これは、びっくり箱。
「きゃっきゃっ!」
プレゼントは、気に入ってもらえたようですね。
ちょっと油断してたら……。
火事です!
春日!
危ないから、火の近くに行かないで!
とんだ災難。
火を見て泣き叫ぶさつき。
ごめん……ごめんね……!
ママがいけないの。
あの火事以来、体の調子を崩してしまったよう。
もう昼なのに、ベッドから起きられない。
春日がトイレ掃除をしてくれた。
なんて気のつくいい子。
体調が不調のまま、どうにかさつきの話し方と歩き方のお稽古。
最後におまる。
何とか次の誕生日までに、すべてを教え込めた。
「春日、宿題終わった?」
「明日やるー」
やれやれ。
もうちょっとこの子の面倒も見てやらなくちゃ。
ぱんだも、このところ全然構ってやれなかった。
ごめんね。
春日と仲良くしてくれてた?
どうやら私は、日常に少し疲れているみたい。
今度の休日は、ベビーシッターを雇って、勇樹さんとダウンタウンへ出かけてみようか。
2007
ひとつ上の兄、翔兄さんのホームパーティーにお呼ばれした。
翔兄さん、親族を集めて自宅でコンサートを開きたかったらしい。
翔兄さんのお嫁さん、美里さんは、音楽家だ。
子供達はベビーシッターに任せて、勇樹さんと二人で出かけた。
久々に子供から離れるのも、結構新鮮でいい。
翔兄さんは、おいしい夕食も皆に振舞ってくれた。
翔兄さんが抜けて、一番上の麻美姉さんがベースに入った。
麻美姉さんも、音楽は得意中の得意。
なかなか楽しそう。
私も、何か楽器ができればいいのにな。
こちらが、美里さん。
ギターを持つ姿が決まってる。
後ろでドラムをたたいているのは、美里さんのいとこ。
どうやら、仕事着のままパーティーに出てきたらしいけど……。
もしかして、勇樹さんの仕事仲間?
ピアノを弾いているのも、美里さんのいとこ。
美里さんの家系は、皆音楽家らしい。
麻美姉さん、かっこいい!
思わず応援。
ゆったりとソファーに腰掛けて、音楽を聴く勇樹さん達。
最近結婚した甥、透兄さんの息子のお嫁さんも呼ばれてた。
いつ見てもきれいな人だ。
生の音楽を聴きながら、チェスに興じるのはとっても贅沢。
翔兄さんの息子だ。
こちらは透兄さんのお嫁さん、詩織さん。
こちらはミナマさんといって、今度翔兄さんの娘、美央ちゃんの婚約者。
どうやら今回のホームパーティー、彼を親族に紹介するために開いたらしい。
透兄さん夫妻にジョークを飛ばす勇樹さん。
どちらかといえば寡黙な彼も、打ち解けた雰囲気で饒舌になっているよう。
翔兄さんは楽しんでる皆を見て、満足げ。
おや、今度は勇樹さんがピアノを。
結構うまい。
意外だ。
夕食はたくさんあるので、それぞれお腹がすいたときに順次食べていく感じ。
夜も更けてきて、美里さんはお疲れ。
私達もそろそろ帰ろうか。
帰り道、ふと夜空を見上げると、なぜか月が二つ出ていた。
何の不具合だろう……。
2007
先日のホームパーティーで親族に紹介されたミナマさんと、姪の美央ちゃんの結婚式に招待された。
また、子供達はお留守番。
夜の結婚式も、ロマンチックな感じで素敵だ。
参列者席最後尾にあるお墓から、何か霊気を感じます。
ミナマさんのお母さんとお婆さんのお墓らしい。
夜に結婚式を挙げたのも、このお二人が化けて参列できるようにと気を配ったからのようだ。
変わった趣向だ。
誓いのキス。
拍手の嵐。
翔兄さんは感無量と言ったところ。
しかし参列者のみんなの頭の中は、なぜか雑念だらけ。
こっちも雑念ばかり。
あ、ちゃんと花嫁さんのことを考えてる人もいました。
よかった。
未央ちゃん、きれい。
いつの間にこんなに大きくなっちゃったんだろう。
新郎さんがケーキカット。
ちゃんとフォークで食べさせてあげます。
何事も抜かりのない翔兄さん。
招待客の中に、ちゃっかりサーボロボも入れていた。
何も言わなくても、お皿を下げてくれたりと、とても便利。
お祝いのケーキが、参列者にも配られた。
ダイニングは大賑わい。
先日のホームパーティのときより人が集まっているみたい。
親族がひとつのところに集まっているのを見ると、本当に幸せ。
勇樹さん、また楽器に飛びついた。
家にもピアノを置いてみようか。
ギター、ドラム、ピアノも入った。
俄仕立てのバンドで、カントリーを演奏。
こちらは枕たたきで白熱中。
透兄さん、息子嫁ととっても仲がよくて、甥はヤキモチを焼くほどだ。
親族が集まるのこんなにうれしいのは、私が物心ついたときには四人の姉と兄はもう家を出ていて、両親と三人暮らしだったせいかな。
パーティーの終わり、新郎新婦を迎えにリムジンが来た。
「未央ー。車が着たわよー」
姪夫婦はこれから新婚旅行に出発。
二人の幸せを祈りつつ、私達もそろそろ帰ろう。
2007
さつきの顔をよくよく見ていて、ひとつ気がついた。
この子の額、もしかして私似なんじゃないか。
瞳は勇樹さん譲りだけれど。
うーん。
やっぱりそうだ。
私に似ると、どうも表情が暗い子になってしまう。
残念だなぁ……。
まあ、仕方がないか。
私の子だもの。
勇樹さんが、新しく私の絵を描いてくれている。
完成が楽しみだ。
春日が学校から友達を連れて帰ってきた。
春日は私と違ってとても社交的だ。
これからもたくさんの友達をつくっていってくれるだろう。
さつきも、お姉ちゃんの友達に遊んでもらう。
この子もお姉ちゃんほどではないけど、社交的だ。
このへんの子供達の性格は、勇樹さん似だ。
さつきは今が一番手のかかる時期。
私が家事を終えて、ようやく寝付いたらと思ったら……。
さつきの鳴き声で真夜中に目を覚まされることも、毎日。
はいはい。
今出してあげますよ。
パパはお仕事でお疲れなんだから、そんな大声で泣いちゃだめ。
そんなさつきも、この日はとうとう誕生日。
例によって、親族一同をご招待。
私の一番上の姉が亡くなってしまったのは、残念だ。
代わりといっては何だが、シドを呼んだ。
家の中は狭かったので、外で。
皆でハッピーバースデイ。
「さつき! がんばって」
「さつきちゃん、さあ成長だ!」
皆がはやし立てる中、とうとうさつきが子供に成長!
こんな感じになりました。
このパジャマは、ちょっとひどいね。
成長したさつきは、早速お姉ちゃんと並んでお勉強。
春日は明日には十代に成長してしまうから、この子達のこんな姿を見られるのも、今のうちだけ。
明日は日曜日。
家族でお出かけするのもいいかもしれないね、勇樹さん。
「月日のたつのは早いものねぇ。あなたが結婚したのも、ついこの間だと思っていたけど」
ひとつ上の姉がしみじみと言う。
私達兄弟も、年をとったな。
両親が亡くなったことさえ、まだ昨日のことのように思えるのに。
勇樹さんが描いてくれてた絵、完成しました。
さっそくダイニングの壁に飾る。
綺麗に描いてくれて、ありがとう。