2007
「……かなた君が帰ってこなかったら、どうしよう……」
家出の後、樹君の子供を宿してしまった弘美ちゃん。
まごうことなき不倫、というか、もう不倫を突き抜けちゃってる感じですが。
弘美ちゃんだって、かなた君のことが嫌いになったわけではないんです。
「私がいけないんだよね。全部」
分かっていたのに、何でこんなことになってしまったんでしょう。
「きゃーははっ!」
真美ちゃんは、無邪気にころと遊んでいます。
そして……、
「ただいま」
「うわー! 帰ってきてくれたの!?」
子供達のことを心配して帰ってきた、かなた君です。
「子供もまだ小さいことだし……。ほら、真美、夕ご飯だよ」
「ぱぱー?」
それから、遥君の宿題の監督。
子供達にしてやらなきゃいけないことは、まだたくさん。
弘美ちゃんも、とりあえず今は子供達のお世話をすることにしました。
二人の寝室に飾ってあるものは、かなた君と撮ったプリクラや、デートでもらったバラの花束。
翌日はかなた君も仕事は休み。
真美ちゃんのあんよの稽古に奮闘します。
実は、真美ちゃんの次なる成長のタイムリミットが、迫っているのです。
「ほらほら、だめだよ。ハイハイしてきちゃあ」
「い~の~。ころたんのマネなの~」
あっ!
「うわ! 私、おっきくなっちゃった!」
ああ、とうとうあんよを覚える前に、子供に成長してしまいました。
……まあ、いいか。
教えてなくっても、ちゃんと二本足で立ってるし。
イメージチェンジ後の真美ちゃん。
瞳がかなた君と同じせいか、全体的にパパ似にも見えます。
弘美ちゃんはわりと平均的に整った顔なので、特徴がつかみづらいってのもありますけど。
子供達が成長したら、教えてあげなくてはいけないことがたくさん。
日が暮れましたが、パパの指導の下、真美ちゃんはお料理のお勉強。
「こうやって出来立てチョコが来たら、アラザンをすばやく振って、箱につめるんだよ」
「時々、つまみ食いとかしてもいーの?」
「出来損ないチョコが来たらね」
「えい、とう、やあ!」
遥君も、サンドバックで身体スキル増強です。
そして、そんな日も終わりに近づいた深夜。
「おうぅっ。き、きたー!!」
お風呂上りの弘美ちゃんに、陣痛が来ました!
「かなたさ……」
でも、それかなた君の子供じゃないよ。
「ひ、一人で産むしか……」
弘美ちゃんがかわいそうなので、寝ていたかなた君をたたき起こすことにしました。
しかし。
「そういえば、夕飯の後片付けまだだった」
かなた君、風呂場を素通り。
「出産に立ち会う」行動を起こしてくれませんでした。
所詮、他人の子か……。
「こんばんわ、赤ちゃん。私がママでちゅよー」
弘美ちゃん、結局一人で産みました。
きゃあああああ! 女の子だっ!! しかも、どうやら弘美ちゃん似みたいですよっ!!!
プレイヤーの方が大歓喜。
早速赤ちゃんに、ミルクを飲ませる弘美ちゃん。
この子は、結衣(ゆい)と名づけました。
結衣ちゃんは、パパなしで育てることになりそうです。
翌日。
「ママ、見て! って、あれ?」
「うわっ! 私汗くさっ!!」
ママは、取り込み中。
さっきまで、外のサンドバックでたるんだお腹を引き締めてました。
しばしお待ちください。
数分後。
「じゃ-ん! 見て見てー!! エープラス!!」
「すごいわ」
仕事から帰ってきたかなた君。
「あれ? 家族が増えてる。いつのまに」
いまさら気づいたんですか。
「弘美の瞳とそっくりだな」
このあと言葉少なに、結衣ちゃんにミルクをあげてくれました。
弘美ちゃんは、真美ちゃんの宿題をみてあげます。
「順序良く考えれば、簡単に解けるのよ」
「その順序良くってのがねー。難しいんだこれが」
「順序良く、順序良く……」
弘美ちゃんとかなた君の問題は、どんなに順序良く考えても、まだまだ解けません。
2007
冬の初めの佐田家分家です。
子供達は朝から元気に、外でスキルあげの訓練。
「ほら、遥! しっかり打ち込んで!」
「えい、やあ!」
弘美ちゃんです。
髪形とメイクを変えて、前より大人っぽくしてみました。
「さー、オムツ替えましょうねー」
結衣ちゃんのお世話。
子供達が学校から帰ると、家にはうっすらと雪が積もっていました。
でもまだ雪遊びできるほどには、積もってないね。
かなた君。
最近の彼は、毎朝誰かに楽しそうに電話をかけています。
弘美ちゃんには、相手が誰かなんて分かりません。
「ふーふー。味見味見」
今夜のメニューは、あったかいマッシュルームポタージュ。
「うーん。ちょっとお塩が多すぎたかしら……」
みんなで夕食。
「僕は外で食べてきたから」
と、かなた君。
でも、みんなと一緒にテーブルについてくれました。
翌朝。
昨晩の残り物を朝食に。
シーズンズから、食べ残しを冷蔵庫で保管できるようになりました。これはうれしい。
作り置きしておけば、子供達も好きなときに冷蔵庫から取り出せます。
もったいない精神が、シムズの世界にも根付いたようです。
「今日は結衣の誕生日なの」
「誕生パーティーをやればいいじゃない。僕には遠慮しなくていいんだよ」
そこで呼ばれたこの人。
樹君です。
さあ、誕生日ケーキを用意して、お祝いです。
樹君も笑ってますが、
(ふつー、俺を呼ぶか!? っていうか、すっげぇ居心地悪いんですけど)
目の前に、弘美ちゃんの旦那さんがいるんだもんねぇ。
樹君の心境をよそに、弘美ちゃんはおたふく顔でろうそくの火を吹き消します。
「ふー。ほら、結衣、火が消えたよー」
くるりと回って、結衣ちゃん成長。
後で、鏡で髪形を変えようね。
(本当居心地悪い! 胃がどうにかなっちゃうんじゃないの、俺……)
いくら結衣ちゃんの父親とはいえ、ねぇ。
弘美ちゃんにはもう、常識とか通用しないのかもしれません。
でも折角きたんだから、結衣ちゃんと一緒に遊んで行ってあげてください。
同じ部屋で、弘美ちゃんも真美ちゃんに本を読んであげてます。
字がすごいびっしりつまってますね。
ハリーポッターか何かかな。
結局、夕飯までご馳走になった樹君です。
もうほとんど自棄で、居座っているのかもしれません。
こうして、結衣ちゃんの誕生日の日は、暮れました。
2007
今日は土曜日。
子供達は朝から、スキルあげのお勉強です。
でも、真美ちゃんは雪のせいか、どうも落ち着かない様子。
「ねー、ママー。キャッチボールしようよー」
「しょうがないわね、ちょっとだけよ」
雪が降ると、本当はスキル上げなんてそっちのけで、遊ばせてあげたいんですけどね。
「それっ」
「ママ、高いよー!」
「体があったまってきたわ。手は冷たいけど」
手袋した方がよさそうですね。
「えいっ!」
「おわ!?」
「へへ。今の剛速球、見た?」
お昼ごろ、雪遊びができるくらい、雪が積もりました。
手前のプールが黄色に見えるのは、恐らくグラフィック上の問題かと思われます。
スノーエンジェル。
広い庭のお家でよかったと思う瞬間。
雪が降ったら当然……
「ほらっ、遥! 後ろにペンギンが!」
「えっ!? どこどこ!」
「隙あり!」
べしゃっ
「うわ!?」
大人げないですよ、かなた君。
雪合戦です。
真美ちゃんは雪だるま作り。
皆、暗くなるまでよく遊びました。
「パパー! ほらほら、こっちだよー!! ママー! こっちに来て、僕の味方になってよ!」
無心に遊ぶ子供達。
「うー、さぶさぶ」
よく遊んだ後は、暖炉に当たって凍えた体を温めます。
「はぁー。極楽極楽~」
お尻も暖めます。
「真美、おもちゃで遊ぶ前に、ちゃんと宿題もしておきましょうね」
「うん。分かってるよー……」
雪で遊んでいると、ついつい忘れてしまいがち。
一方、かなた君は夕暮れ直前に、一人でお出かけ。
彼の向かった先は、ウッドランドパーク。
実は、弥生ちゃんとデート。
仲良く釣りです。
釣竿、かなた君の顔に刺さってますが……。
ここ最近、かなた君が毎朝電話をかけていたのは、弥生ちゃんでした。
弘美ちゃんが樹君とあんなことになって、かなた君の弥生ちゃんへの思いが、急に現実的になったのです。
大学から、婚約者と一緒にプリーザントビューに戻ってきた弥生ちゃん。
婚約者がいるといえど、それは親(というかプレイヤー)が決めただけの相手。
弥生ちゃんだって、誰かに望まれて結婚した方がいいに決まっているのです。
というわけで、かなた君。
果然やる気になって、弥生ちゃんを口説いていたり。
この日も、彼女にプレゼントを持ってきました。
弥生ちゃん、喜んでくれました。
ちなみに中身は、お食事クーポン券ですが。
このアイテムって、どうやって使うんでしょうね。
分かったためしがありません。
2007
「ほら、結衣ちゃん。雪ですよー」
弘美ちゃん、末娘に雪を見せてあげました。
小さな結衣ちゃん。
ほとんど雪風呂に入っているようです。
ぱく
「ちゅめたい……」
お腹こわすよ。
風邪をひかない内に、家の中に入りました。
「大きくなったら、りょこーにいきゅの」
「飛行機にしなさいね。船は危ないからだめよ」
「ママー! ねえ、ママってばー!!」
子供達が、学校から帰ってきました。
「……ん? あら、お帰りなさい……」
「ほらほら! A+だよ! A+ぅっ!!」
弘美ちゃん、一人で考え事をしていたようです。
と……。
しまった!
今日は遥君の誕生日だった!!
お誕生日ケーキなしで成長です。
「うわー! とうとうティーンになったぞー! これで携帯買ってもらえるー!!」
これまた、ひどい格好で成長してしまいましたね。
そして、遥君がティーンになったということは……。
「ごめんね、遥。ママとパパね、別れることにしたの……」
「うん。僕もさっきパパから聞いたよ」
そうです。
遥君がティーンになったら、かなた君は遥君を連れて、この家から出ることにしたのです。
それもこれも、みんな弘美ちゃんが招いてしまったこと。
かなた君の心も、今では弥生ちゃんに向かい、弘美ちゃんのもとにはもうありません。
「パパとお兄ちゃんだけだけ、お引越しするの? じゃあ真美、毎日パパの家に遊びに行くね」
「うん……。近所だから、いつでもおいで」
そして雪の晩に、かなた君と遥君は、弘美ちゃんのもとから去りました。
かなた君はこれから、弥生ちゃんとの恋を育てていくために奮闘することになります。
「はあ……」
ちなみにぴっけの色が、前と違っていますが、気にしないで下さい……。
「なんだか寂しくなっちゃったね」
「大丈夫よ。ママがパパやお兄ちゃんの分も、賑やかになって見せるから……!」
「きゃうー! ころたーん!!」
本当に、広い家に三人と一匹だけになってしまいました。
「あ、今日ね、結衣の誕生日なの。来てくれるわよね。もちろん来るわよね」
「来たーーーーーーーっ!!!」
「ひぃ! 俺をとって食う気かよ……!!」
弘美ちゃん、樹君を捕獲。
あるいは、恋に自由奔放なロマンス願望を、一途な家族願望がロックオンした瞬間なのかもしれません。
なにはともあれ、結衣ちゃんのお誕生日です。
もうケーキはなしにしました。
あってもどうせほとんど食べないしね。
結衣ちゃん、あったかそうな服で成長です!
「わーい! これで結衣と一緒にお外で遊べるー!!」
真美ちゃんも大喜び。
結衣ちゃん、イメチェン後。
この無気力な姿は……。
やっぱり弘美ちゃん似ですか。
こうしてかなた君との別れを機に、弘美ちゃんとその娘達の新しい人生が、始まりを告げました。
2007
「結衣ちゃん、メリーマックしよう」
「うん、いいよー」
一緒に遊べるようになって、よかったね。
でも、メリーマックって一体?
見てみると、アルプス一万尺みたいですね。
「おじさん、こんにちわ~。それね、ぴっけ2号って言うの」
「……おじさん」
わが子に他人扱いされるのは、なんとも言えず。
樹君、居間にいる弘美ちゃんのところへトボトボ。
弘美ちゃんにハートをいっぱい飛ばしてます。
弘美ちゃんはテレビでスポーツを歓声中。
「ひゃっほー! また入ったわー!!」
でも、樹君がやってくるとSBN(シムブロードキャストネットワークだったっけ?)にチャンネルを変えました。
「結衣には会った?」
「うん。おじさんって言われた。……教えてないの?」
「うん。ママがお星様にお願いして生まれた子供、ってことになってるの」
「あ、そう」
弘美ちゃん、この間テレビのチャンネルをスポーツ中継とSBNに切り替えてばかり。
こんなに落ち着かないのは、樹君といるからでしょうか。
「……」
「……」
ほんとうに、チャンネルを切り替えてばかり。
真美ちゃんは、ころとお外に遊びに出ていました。
棒投げです。
「ころは賢いねー」
「わふ」
樹君も、一人で外に出てきました。
弘美ちゃんのことを考えながら。
「ねぇねぇ、おじさん!」
と、真美ちゃん。
「キャッチボールしようよ」
「よし、いいぞ。思いっきり投げて来い」
「いいのー? 真美のは、剛速球なんだから」
子供達、楽しそうです。
結衣ちゃんには、家を出たおにいちゃんから電話がかかってきていました。
直接には一言も交わしていなかったけど、気にしてくれていたようで、うれしいです。
「ええっ。結婚するの? お父さんが!?」
結衣ちゃん……。
今その話題は、口にしない方がいいんじゃないのかな。
子供達の話題は、大人達の沈黙を超えています。
(結局のところ、子供達は俺達よりも状況をよく分かってるのかもしれないな……)
なんとなくそんな気がした、樹君です。
そして弘美ちゃんは、新たな旅立ちを一人ひそかに進めるのでした。
弘美ちゃんたちのお話は、リバーブロッサム・ヒルズにて続きます。