2007
春日がなんだか怖い顔をして、電話をかけていた。
さては、何かたくらんでるな。
多分、今夜にでも友達と家を抜け出そうとしているのかも。
結局、出掛けに勇樹さんに見つかってしまって、お説教。
「こら、春日。こんな夜遅くにどこに行くつもりだ?」
「ええーと……」
「まったくこれだから、油断がならない。ベッドに戻りなさい」
「はぁい」
あらかじめ言ってくれてれば、私達も外出を認めたかもしれないけどね。
でも、娘の夜遊びは親として心配。
春日の友達が、車で迎えに来たらしいが……。
リ、リムジン!?
春日ったら、どんな家の子と友達になったんだろう。
これにはちょっと驚いた。
翌日。
さつきは朝からチョコレート製造機で料理の勉強。
昨晩、抜け出すところをつかまった春日も、おとなしくお勉強。
でも昨日のことがよっぽど悔しかったのか。
ふいにステレオの音楽に合わせて、めちゃくちゃに踊りだした。
「お姉ちゃん、頭おかしくなったの?」
「ははは! 何だ? その振りは」
勇樹さんには好評。
本人もいつの間にかこんなに楽しそう。
そんな春日も、いよいよ大学へ進学するときが来た。
春日が引っ越してしまった後の子供部屋。
なんだか、寂しくなってしまった。
「ねえママ。私も大学に行こうと思うんだぁ」
「あら、さつきはまだ早いんじゃない?」
「うーん、でも私、早く大人になりたいし」
「パパとママももう年だし、早く大人になって安心させてあげたいなぁって思うのよ」
「確かにそうだなぁ」
さつきのこの気持ちはうれしい。
でも、子供たちが大学に行ってしまうと、この家もずいぶん寂しくなるな。
親の私がこんなことじゃ、だめね。
こうしてさつきも大学へと去り。
その晩、春日が電話をかけてきた。
「ママ、私達がいなくなって、さみしくない?」
「いやね。大丈夫よ」
「卒業するまで待っててね。もしかしたら、お婿さんを連れて家に帰ってくるかもよ」
「楽しみだわ」
本当に、子供たちの成長が楽しみだ。