2007
「よしっ。これに決めた!」
弘美ちゃん、仕事が決まりました。
ママの麻美ちゃんと同じ、外食業キャリアです。
お料理も上手になれて、花嫁修業にはぴったりの職種。
さらに、今日はもうひとつ決めてしまいたいことがあります。
「もしもし、かなた君? 今夜、うちに夕食を食べに来ない?」
弘美ちゃんに招待されてやってきたかなた君。
あいさつするなり早速、居間のピアノにかじりついてしまいました。
音楽が好きなんですね。
「ねえ、かなた君。……ちょっといい?」
「あ、はい? 何かな」
「かなた君!」
「えっ、どうしたの?」
突然かなた君の前にひざまずいた弘美ちゃん。
これにはかなた君もびっくり。
「こここ、これっ……!」
「箱?」
ぱかっ
開ければ輝く婚約指輪
弘美ちゃん、立場が逆なんじゃない?
「どうしたんだい? これ」
驚きのあまり、がに股で指輪を受け取るかなた君。
「どうかな……」
「まるであつらえたみたいにぴったりだよ!」
「じゃ、OKなの?」
「もちろんだよ!」
「よかったー!」
弘美ちゃん、とうとう婚約です。
後は結婚式だけですね。
「家の庭に結婚式場があるから、そこで式を挙げられたらと思うんだけど」
かなた君には弘美ちゃんの家にお婿に行ってもらおうと思います。
一仕事終えた後は、夕食。
「それにしても驚いたな。まさかプロポーズされるとは思わなかったよ。僕の方からプロポーズしようと思っていたんだけど」
「本当? うれしいな」
ころが食卓にやってきました。
ものめずらしげにかなた君を見ています。
もうすぐこの人が家族になるよ、ころ。
かなた君が帰った後、婚約のことをママにご報告。
「ママ、私結婚するよ!」
「パパ、私の花嫁姿、見せたかったな」
弘美ちゃんの両親は、きっと空から結婚を喜んでくれると思いますよ。
弘美ちゃんがお墓の前でしんみりしている頃、表では……。
け、喧嘩!?
カーラが誰かと戦っています!
「フギャーッ!!」
ぼこばこがりがり
あっ! なんか太い尻尾が見えました!!
なんなんだ。
なんと、相手は狼です!
当たり前というか、カーラは負けました。
なんてものに喧嘩売ってるんだよー!
「フーッ」
「がるるっ」
女王様なカーラ。
自分の縄張りを荒らされまいと、侵入者に挑んだんですね。
その勇気だけはかいましょう。
眠りにつく弘美ちゃん。
(かなた君で良かったのよね……)
まだ微妙に、樹君のことが気にかかっているようですね。
家族願望は一度好きになった人のことを、忘れないからなぁ……。
2007
今日は弥生ちゃんの誕生日です。
皆で集まってお祝い。
「弥生ちゃん、おめでとう!」
「大きくなったね!」
「皆ありがとう。それじゃあ、ろうそく吹き消すねー」
お父さんとお母さん、お爺ちゃんに弘美ちゃんが見守る中。
きらっと光って、弥生ちゃん成長!
こんなになりました。
ちょっと頬がやせてて色も白いから、病弱そうに見えますね。
そして今日は、透君にとっても大事な日でもあります。
弥生ちゃんの成長を皆で祝っているその後ろに、静かに表れた黒い影。
死神さんです。
「さあ、時間が来ましたよ」
「ああ。そうか。もう、そんな時間なんだね……」
うなだれる透君。
「弥生の成長した姿も見れたし、僕は満足だよ。弘美ちゃんの花嫁姿が見れなかったのは、残念だけど」
「もう思い残すことはありませんね」
ところでちょっと。
邪魔だよ! そこの青い服の知らない人。
透君、旅行かばんを手に、静かに天国へと旅立っていくのでした。
「うわぁぁぁぁん! 叔父さーんっ!!」
弘美ちゃんにはお葬式続きで、ちょっとかわいそうですね。
でも、もうすぐ結婚だから。
庭の裏手には、豪華な墓標が勢ぞろいすることになりました。
またいつかの晩には、ひょっこり家族の前に出てきてくれることでしょう。
たくさん泣いた後は、皆でご飯。
こうしてとうとう佐田家分家は、新しい世代の者達だけとなりました。
やがては、弘美ちゃんのお婿さんがここに加わり、子供も出来ることでしょう。
2007
弘美ちゃん、今日は大切な日です。
「よおっし! 気合入れてがんばるぞ!」
まあまあ、肩の力抜いて。
今日の結婚式は、身内とごく親しい友人だけでつつましく開くことにしました。
さて、招待客がそろったところで、いよいよ式の始まりです。
花びらが舞い落ちる中、指輪の交換です。
今度はかなた君から弘美ちゃんへ。
皆も拍手です。
ところで麻緒ちゃん。
ぴっけはいいから、妹の結婚式くらい出てあげなさいよ!
「ジンセイハカネダヨネ!」
「誰が教えたのかしら。こんな台詞」
「おめでとう!」
皆に見守られて、無事式は終了。
誓いのキス。
まだうろうろ立っている人がいるなぁ。
なかなか、参列者の足並みがそろわない式になってしまったようです。
「結婚したいしたいって言ってたから、よかったんじゃねぇの?」
とか口では言いつつ、「弘美を口説く」という願望を今でも持ち続けている樹君。
とりあえず、今日だけはおとなしくしといてね。
皆さん、拍手拍手。
本当におめでたい日です。
ケーキカットをしましょう。
持っているのは、ただの包丁?
「はい、あーん」
弘美ちゃん、ちゃんとフォークで食べさせてあげます。
手づかみで食べさせるシムもいますが、性格によるんでしょうかね。
あ、あぶない。
弘美ちゃん、よそ見しないで。
きったケーキは食堂で皆といただきます。
樹君がやってきました。
「今日は、おめでとさん」
「ありがとう」
晴美叔母さんもやってきました。
なぜか樹君をにらみつけてます。
かわいい姪に、ロマンス願望の彼が何か悪さをしないかと思ったんでしょうか。
(さすがにしねえよ。今日だけは)
なんとなく、沈みがちの樹君。
食堂が微妙な雰囲気にある頃、花婿さんは外のベンチで弥生ちゃんとおしゃべり。
「僕も、今日からこの家に住むことになりました」
「弥生です。どうぞよろしく」
式には出なかった麻緒ちゃんも、ケーキだけはしっかりといただいてました。
「弘美が結婚かぁ。私の若い頃を思い出すなぁ」
弘美ちゃんとは、ほとんど親子くらいに年の離れている麻緒ちゃん。
彼女の方は、じきに老齢者になります。
食堂に修太君もやってきました。
「家はもうすぐ子供が生まれそうなんだ。イリーナに似てるといいんだけどな」
「うわぁ、おめでとう!」
大学時代の仲間達も、着実に人生を歩んでいるようです。
「お姉ちゃん!」
「弘美、おめでとう! とってもきれいよ! ママやパパも天国できっと喜んでいるわ」
結婚パーティーの終わりに、記念写真も撮りました。
そして二人はリムジンに乗り込んで、新婚旅行です。
いってらっしゃい。
2007
結婚式から程なくして、弘美ちゃんのおなかが大きくなりました。
おめでたです。
そして、その晩のこと。
出ました。
麻美ちゃん、天国からお祝いするだけでは飽き足らず、化けて出たようです。
自分が死んだ場所でひとしきり涙に暮れた後……。
自分の寝室だった場所へ。
(まあ、この部屋は今じゃ弘美たちが使ってるのね)
(弘美ー! 結婚おめでとうー!)
声なき声で祝福する麻美ちゃん。
ほら、弘美ちゃん、後ろ後ろ!
ママがいるよ!
しかし、残念ながら弘美ちゃんは麻美ちゃんに気がつきませんでした。
まあ、幽霊なんてこんなもの。
翌日の朝、麻緒ちゃんが訪ねてきました。
「気のせいかなぁ。昨日の夜はずっと、誰かに見られてる気がしたの」
「妊娠して、体調が変わったせいじゃない?」
「私も、双子を生むまでは、気分がすぐれなかったものよ」
「そういうものかなぁ」
「僕に出来ることがあったらいってよ。なんでもするから」
「ありがとう、かなたさん」
ところがその日の晩も……。
今度は弘君の幽霊です。
しかも、弘君は麻美ちゃんほどおとなしくはありませんでした。
(お化けだぞ~!!)
「きゃああああああああああ!!!!」
「あああああ……」
弘美ちゃん、驚きのあまり漏らしちゃいました……。
「あ、お姉ちゃん……」
ころと遊びに外へ出てきた麻緒ちゃんに、見られてしまいました。
パパと再会できたのはいいものの、余計なサプライズはいただけませんね。
翌日は、かなた君が仕事に出る前に、弘美ちゃんに朝ごはんを作ってくれました。
感謝。
さて、突然ですが。
校長先生を呼びました。
弥生ちゃんを私立高校へ入学させるためです。
やってきた校長、なぜか鏡に映る自分の姿を指差して、含み笑い。
「ぷぷぷ。私がうつっとる」
そりゃ、鏡ですから。
そしてこんな日に限って、火事が起こるマーフィーの法則。
「きゃあああ! 誰かーっ!」
聖司君、火事のことを気づかれないよう、必死にトークで校長を引き止めます。
「弥生はとてもおとなしい子で、家に帰ったらまず宿題をする子でして」
「いやぁ、感心感心」
必死の消火活動。
早く消して、消して!
そしてこんな日に限って……。
「あ、出ちゃう……。出ちゃうよ!?」
ええー!!?
出産ですか!!
「いたたたた!」
陣痛ですか!?
ああもう。校長が来る日は必ず何かが起きるな!
仕事から帰ったかなた君が駆けつけてくれましたが、何もすることがありません。
とりあえず、弘美ちゃんを応援。
「ああー! 神よ、弘美を助けてください」
そして生まれました。
元気な男の子です。
名前は遥(はるか)
恐らく、お父さん似だと思われます。
校長も赤ちゃんを見に来た。
今日は火が出たり赤ん坊が生まれたりしたけれど、何とか無事に校長を接待できて、私立校入学が出来ました。
出したディナーは、黒こげ七面鳥でしたが。
まあ、よかったよかった。
そして今晩も弘君が出る。
今度は弘美ちゃんを脅かしたりしたらだめですよ。
2007
「オムツ替えて、お尻キレイキレイしましょうねー」
弘美ちゃん、夢にまで見た我が子のお世話です。
家族願望の彼女にとって、子供の世話は幸せそのもの。
仕事についていたのも、出産を機会にやめました。
これからは、子供が大きくなるまで専業主婦です。
「よしよし」
弘美ちゃん、子供の世話はいいから、早く服を着なさいって。
朝っぱらから下着姿のままです。
服を着替えて、遥ちゃんを寝かしつけます。
「ああー。もう一人くらい子供がいてもいいかなー。遥にも弟か妹がいると、一緒に遊べるし」
「僕の仕事は真夜中で日中は家にいるから、弘美ちゃんが仕事をやめることないと思うけど」
「私、自分で子供の世話をずっとしていたいの」
「そうよね。分かるわ」
「遥ー。ただいまー」
かなた君も、初めてのわが子にメロメロのようです。
仕事が忙しいので、子供の世話は弘美ちゃんにまかせっきりですが。
その日の晩。
出ました。透君の幽霊です。
麻美ちゃんも出てきました。
詩織さんまで!?
今夜は幽霊が多いですね。
娘の夢枕に立つ麻美ちゃん。
(孫が生まれたー!)
「うーんうーん。なんか寝苦しいよぉ」
麻美ちゃん、そこどいてあげなさいって。
一方の透君は、自分のベッドを見つけて大喜び。
幽霊って、自分のベッドがあるとわざわざ見に行きますよね。
ベッドがないと、「私のベッドはどこ!?」って騒ぎますし。
幽霊とベッドの不思議な関係。
「昨日の晩は、よく眠れなかった……」
麻美ちゃんのせいですよ。
そんな弘美ちゃんに、
「あらっ?」
第二子が宿りました。
おめでとう。
「かなたさん、私、妊娠したよ」
弘美ちゃんのパートナーは夢の中。
夜が明けてから、報告しましょ。
女かな、男かな。
楽しみです。