2007
「あーあ。よく寝たぁ」
夜が明けました。
二人同時に目を覚ます弘美ちゃんと麻緒ちゃん。
「お姉ちゃん、人生いつも曇りってわけじゃないよね。日が射すこともあるよね。私、ママがいなくても強く生きていくわ」
「そうよ、弘美。その調子!」
麻美ちゃんとの別れから立ち直った弘美ちゃん。
麻美ちゃんとおんなじような顔をして、朝ごはんをほおばります。
「まずは、新しい出会いを求めに行かなくちゃいけないわね」
叔母の晴美ちゃんから電話がかかってきました。
どうやら、弘美ちゃんを心配してくれたようです。
「あ、叔母さん? 私はもう大丈夫。それでね、私、新しい人に出会ってみたいんだけど、何かいいアドバイスないかなぁ」
(ダウンタウンに行ってみれば? あそこは人がたくさんいるから、弘美ちゃんと気の合う人も、きっといるわ)
「ダウンタウンかぁ」
ダウンタウンに一人で行くのは気後れした弘美ちゃん。
かわりに、近くの公園へ出かけてみました。
「うわー。池がきれいー」
散歩をしてみるだけでもいいところですね、ここ。
とことことこ
(あっ! なんだか素敵っぽい人)
弘美ちゃん、早速誰かを見つけたようです。
ハートをたくさん出して、どうやら一目惚れらしい。
「あのー、こんにちは。いいお天気ですね!」
「あ、こんにちは」
「見かけない顔ですけど、近所に住んでるんですか?」
「最近越してきました」
「じゃあ、よかったら私がこのあたりを案内しましょうか? 近くに、おいしいパフェのお店もあるんですよー」
「へー、そうなんですか。僕はこう見えても、甘いものに目がなくて」
「私も甘いものが大好きです!」
……なんだろう。
この英語の教科書的な会話は。
話のネタにつまった弘美ちゃん。
必死に次の話題を探します。
「ええっと……。私は今日の朝、スクランブルエッグを食べたんですよー。半熟とろとろの!」
「弘美さんは半熟派なんですか?」
よかった。話についてきてくれました。
「僕もスクランブルエッグは、火を通しすぎないのが好きなんですよ」
「わー! 気が合いますねー!」
別れ際に、好きなものを聞いてみました。
「悪臭」
……弘美ちゃん。
この人、ちょっと変だよ。
弘美ちゃんが家に帰ってくると、また死神が出没!
どうやら詩織さんを迎えに来たようです!
うわーっ。
麻美ちゃんが死んだばかりだからって、油断してた!
見送りに集まってくる家族。
今日だと分かっていたら、お嫁に行った娘も電話で呼び寄せたのに……。
残念だけど仕方がありません。
さようなら、詩織さん。
麻美ちゃんと同じように、旅行かばんを手に、すっと消えていく詩織さん。
「詩織ー!」
「母さん!」
「わおーん!」
「なーご……」
また真っ赤……。
麻美ちゃん達のお墓の横に、詩織さんのお墓が並びました。
またそのうち、いつかの晩に再開できるときも来るでしょう。
「ううっ。母さん……」
二日連続でお葬式っていうのも、ちょっとつらいですね。
弘美ちゃんはしょちゅう麻美ちゃんのことを思い出しては泣いてるし、聖司君や徹君も詩織さんの事で泣いてるし。
「おばあちゃんに宿題教えてもらいたかったのに……」
シムの死は、色々と残念です。
復活の呼び鈴で生き返らせてもいいんですが、それをやっちゃうと次世代のシム達を育てられないからねぇ。
「次はわしの番かのー」
そう言わずに長生きしてくださいよ、透君!
2007
星のきれいな夜。
弘美ちゃん、この間公園で出会った男の子、吉永かなた君とダウンタウンにお出かけしました。
「ここがダウンタウンで一番人気の『地下室ゼロのナイトクラブ』だよ」
「弘美さんはいつもここに来るの?」
「ううん。今日が初めて」
ナイトクラブどころか、ダウンタウンに行くのだって初めてな弘美ちゃんです。
早速二人でスマッスル!
弘美ちゃん、なにやら難しげなお顔をしていますが……。
「あーあ。もうちょっと派手な服で来ればよかったかなぁ」
そうですね。ナイトクラブだしね。
「えーとえーと……。こうかな?」
なんともぎこちない踊りです。
対してかなた君は、なかなかノッていらっしゃるようで。
「スマッスルは初めてだけど、結構楽しいもんですね」
「ハイヨー!」
弘美ちゃん、振り付け違うよ!
「おっとっと……!」
「あはは」
おっ!
ようやく二人の踊りがそろってきました!
「ワォワォワォ!」
あ、猫が来た。
弘美ちゃん、足元気をつけて!
「アレーッ!!?」
弘美ちゃん、猫踏んじゃった。
スマッスルで楽しんだ後は、二人で写真を撮りました。
弘美ちゃん、うれしそうです。
「なーご」
「よしよし。さっきはビックリさせてごめんよ」
「かなた君。今日はありがとね」
「こちらこそ。とても楽しかったよ」
お別れにちょっとキスしたら……。
二人に淡い恋心が来ました!
「やっぱりもうちょっと二人でいようか」
「うん……」
変なお面をバックに、いいムード。
というわけで、お食事に行くことにしました。
場所は「ロドニーの隠れ家」
深夜まで開いていそうなお店は、ここしかなかったので。
「お待たせしましたー。おっと……」
ぐらり
がっしゃーん!
「ワオ!?」
「申し訳ございません!」
「もー! なんなのよー!」
弘美ちゃん、とんだ災難です。
よりによってデートしているときに……。
甘いものが好きと言っていた、かなた君。
クレープシュゼットを注文していました。
「猫を踏んだり、お皿を落とされたり、弘美さん今日は大変だったね」
「ほんとにそうよー。今日は私、ついてないみたい」
あう、食事が終わる頃には夜が明けてしまった……。
結局夜通しかなた君と遊んだ弘美ちゃん。
まだちょっと時間があるので、カードゲームを一緒にすることにしました。
ところがその時……。
「きーーーーーっ!」
頭を抱えて叫んだ人物が、お店に飛び込んできました。
竹中樹君です!
なんでお前がこんなところにいるんだー!
「この浮気者ー!」
バッシーン!
「きゃー!?」
「うーん……」
樹君の怒りのビンタに、星を回す弘美ちゃん。
しばらくお待ちください……。
「お前、弘美の何なんだ!」
「何って、友達ですよ」
うん。まだ淡い恋心だけだもんね。
「樹君。どうして私が、あなたに浮気者扱いされなきゃいけないの?」
そうです。
大学時代での度重なる喧嘩で、弘美ちゃんの樹君への思いはすっかり冷めちゃっています。
ところが、どうやら樹君は今でも弘美ちゃんが大好きだったようで……。
「お前と一緒にいる奴、気に食わねぇ!」
樹君、すごい顔してます。
「樹君、とにかくあなた邪魔よ。よそに行って!」
「ああ、行ってやるとも!」
肩を怒らせて立ち去る樹君。
それにしても、どうしてこんなときに樹君と出会ってしまうんだ。
ふつーにプレイしてても、何かしらのドラマが生まれる。それがシムズ。
「それじゃあ、かなた君も、またね」
「また……」
別れ際のキスで、今度は弘美ちゃんに赤いハートが点灯!
樹君、図らずも恋のキューピット役になったようで。
つくづく哀れな男です。
2007
弘美ちゃん、今日もかなた君とデートすることになりました。
やってきたのはダウンタウンの公園。
のんびりとお散歩です。
弘美ちゃん、今日はよそ行きのかわいい服をちゃんと着てきました。
「それにしても、この間は大変だったね」
「今はその話はよしましょうよ」
「もっと近くに寄ったら?」
「え? いいの?」
かなた君に誘われた弘美ちゃん。
(ひゃー! 肩組んでもらったの、はじめてかも!)
いかにも恋人同士らしい仕草をされて、有頂天。
樹君のときは、恋を楽しむ間なんてありませんでしたからね。
大胆になった弘美ちゃん。
抱っこまでしてもらいました。
でも、それ以上はここではやめなさいね。
その後、スローダンスを踊ろうとしたら。
「あっ! ごめん!」
かなた君が弘美ちゃんの足を、踏んづけてしまいました。
慣れないことはするもんじゃありませんね。
「痛い……」
弘美ちゃん、顔が怖いよ。
気を取り直して、デートの続き。
「そろそろ夕ご飯にしようか」
「そうしましょう。叔母さんに教えてもらった、いいお店があるの」
「道教えてね。それじゃあ、出発」
やってきたのはカフェレストラン。
弘美ちゃん、今回もマカロニチーズを食べたがっています。
ですが、デートのときくらいもうちょっと大人向きのメニューにしましょうよ。
「かなた君と会えて本当によかったわー。こうして一日楽しく過ごせたし」
「そう言ってもらえて、うれしいよ」
「ところで、この間の男の人は?」
「あー。あれね。うーんと、元彼っていうかなんというか」
「元彼?」
「とりあえず、今は私と彼とは何の関係もないから……」
「なんだ。そうなんだ。もぎゅもぎゅ」
かなた君も、こんな顔してご飯を食べるシムでした。
弘美ちゃんとお似合いだよ。
心配事がなくなったかなた君。
ちょっとふざけて、弘美ちゃんのお皿をつまみ食い。
「このポテトもらうよ」
「あらっ?」
「とったなー」
「うーん。おいしい」
「僕のをあげるよ。ほら、ポテト」
「あーん……」
「うーん。ポテト大好きー!」
「はは。それじゃ、残りも全部あげようか?」
などと、楽しい夕食の時間はすぎて。
「今日は本当にありがとう」
「こちらこそ。とても楽しかったよ」
順調に、かなた君との愛をはぐくんでいく弘美ちゃんなのでした。
2007
弘美ちゃんとデートをしたその晩のかなた君。
ビジネスキャリアで働く彼が、レントゲンについて熱く語る練習をしていたら……。
いつのまにやら、弘美ちゃんが家の中に来ていました。
おかしいな。普通、挨拶しないと勝手に家の中に入ってこれないはずなのに。
弘美ちゃん、何か言い忘れたことでもあるんでしょうか。
とりあえず、あわてて汚れていたテーブルを片付けるかなた君。
「来るなら来るって、あらかじめ言っといてもらわないと……」
でも、男の一人暮らしにしては、家の中は綺麗に整っている方ですよ。
夜も遅いですし、弘美ちゃんがおなかをすかせているといけないので、ご飯を作りました。
ついでにかなた君もお夜食にします。
「どうしたの? 突然訪ねて来たりして」
「うーんと。なんていうか、その」
どうもはっきりしない返事の弘美ちゃん。
テーブルの下では。
弘美ちゃん! かなた君の足踏んでる! っていうかヒールの間に挟んでるし!
かなた君、わけもわからず足の痛みを我慢します。
やがて食事を終えた弘美ちゃんは。
「もう夜も遅いから、帰るね」
と言って、本当に帰ってしまいました。
一体何しに来たんでしょう。
翌日の晩。
また、弘美ちゃんがやってきました。
フキダシの中にあるのは……、婚約指輪ですか?
まだちょっと気が早いんじゃない?
「あれ? また来たの?」
弘美ちゃん……。
それも気が早すぎるって。
とりあえずかなた君、今日も弘美ちゃんのためにスパゲティーを作ることにしました。
ところが。
かなた君が料理を作った後、仕事の疲れもあってソファーで仮眠を取っている間に、弘美ちゃんは帰ってしまったようです。
作った料理も、手をつけていないようでした。
「なんだったんだろう……」
めずらしいですよね。
こんなに何回も同じ人が突然訪ねて来るって。
かなた君が、もう少し気が利いていたらよかったのですが。
その日の深夜、黒い袋を持って弘美ちゃんがこっそりとまたやって来ました。
今度は家の中に入らずに、黒い袋から……、
ホットタブが出ました!
こんなでかいものが、そこに入っていたんですか!?
「やっぱり、恥ずかしくってこんなの正面きって渡せないよ……」
ど、どうやら、この間のデートのお礼として、このホットタブをプレゼントしたかったらしいです。
何回もかなた君の家に押しかけてきたのは、どうやらこのためだったようで……。
そうか……。
再び忍び足で夜の闇に消えていく弘美ちゃん。
こんな大きなものを……。
ご苦労様です。
2007
ある朝のこと。
「ねえ叔父さん。私、仕事探そうと思うんだけど」
「あせらなくてもいいよ。家はだいぶ蓄えがあるから、好きな仕事が見つかるまでがんばりなさい」
「でも、働かなくてもいいけどなぁ。家は聖司がしっかり稼いでるから」
「うーん。さすがにそういうわけにも」
さて弘美ちゃん、今日はある人物に電話をかけました。
相手は……。
「あ、樹君? 最近どう、元気してる?」
樹君は友達でもあるし、そういつまでも怒っていられない彼女です。
「よかったら、うちに夕ご飯食べに来ない?」
招待されてやってきた樹君。
挨拶のハグですが、だいぶうれしそうな彼です。
「この間は悪かったな……。俺、なんかカーッとして」
「いいわよ。もう気にしてないから。私達、友達だもんね」
「友達……」
皆で夕食。
一人暮らしの樹君には、久しぶりに賑やかな食卓なのかもしれません。
樹君と遊びたい願望があった弘美ちゃん。
くすぐりあって、この通り。
「こちょこちょこちょ」
「わき腹はやめろって!」
それにしても、何で突然弘美ちゃんに家に招待されたのか。
その真意がいまひとつ分からない樹君です。
「完全に嫌われたと思ったんだけどなぁ。あ、ぴっけ……」
考え込んでいるさなかに突然ぴっけが飛来。
かごの扉が開いていたんですね。
夜も遅くなって、首をかしげながら樹君は帰途につきました。
弘美ちゃん、ある決心を前にして、樹君との関係をはっきりとさせたかったみたいです。
「樹君はやっぱり友達だもん。……友達だもん。恋人はかなた君」
しかし一度は恋仲にあった樹君です。
家族願望の弘美ちゃんには、まだ樹君を忘れたくない願望があったのです。
さて、翌日。
弘美ちゃんは聖司君に頼んで、論理スキルの強化です。
「これでこうやって、薬を作るのねー」
「気をつけてよ。失敗してウイルスなんて出来たら大変だからね」
夜まで特訓。
仕事を始めたらなかなかスキルをあげる暇がありませんから、今のうちにしっかりとレベルあげにいそしみます。
「今日もよく勉強したな。お仕事始めたら、バリバリがんばるぞ」
「弥生も、弘美ちゃんを見習ってたくさん勉強しなきゃね」
「えーっ?」
今夜も賑やかな佐田家家の食卓。
食後、透君はカーラと二人で、ベンチに座ってくつろぎます。
「これで弘美ちゃんが結婚したら、家ももっと賑やかになるだろうなぁ。ねぇ、カーラ」
「にゃん」
「でも僕は、弘美ちゃんの結婚式は、見れないかもしれないな。それがちょっと残念かな」
風がちょっと冷たい、静かな夕べです。